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人生のイノベーション

2016年12月18日 CATEGORY - 代表ブログ

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皆さん、こんにちは。

経営学において世界で最も評価の高い研究者の一人が、自らの病気という問題に直面した際に、人生における「幸せの方程式」を解き明かして見せてくれる本当に素晴らしい本に出会いました。

以前、このブログでも紹介しました「イノベーションのジレンマ」の著者、クレイトン・クリステンセン教授による「教育×破壊的イノベーション」をご紹介しましたが、今回はもう一冊、「イノベーション・オブ・ライフ」をご紹介します。

彼は世界最高のビジネススクールであるハーバードビジネススクールでMBAを取得されているのですが、何年かに一度開かれる同校の同窓会での現象から問題意識を引き出します。

それは、さすが世界最高のビジネス教育機関を卒業した人間ばかりが集まるため、当初、年収も伴侶も目を見張るような素晴らしい幸せを手に入れた人ばかりとのことですが、年を追うごとに、「幸せ」とはいいがたい状況の人間が増えてくるというものでした。

具体的には、経済的に大きな犯罪に手を染めてしまうケースもあれば、夫婦間や親子間の問題が生じ、家庭がうまくいかないケースもあります。

このことについては、なにもハーバードビジネススクールに限ったことではなく、多かれ少なかれ私も含め誰しもが感じている事でもあると思います。

なぜ、我々のような普通の人間だけでなく、ハーバード卒という素晴らしいキャリアを持った人間でさえも、その人生をしっかりとマネージすることが困難になるのでしょうか。

著者は、その理由として、人間の人生にはあまりに変数が多すぎるために個別の問題に対して一つ一つ特効薬(対策)を作ることができないことをあげています。その上で、これをうまくマネージするために必要となるのが、「理論」だと言います。

私は、これを「方程式」と表現したほうが分かりやすいと思うのですが、本書では著者が、各章ごとにこの「理論」にあたるものを著者の人生に重ね合わせながら解説してくれています。

とはいうものの、本書で著者が紹介しているように、そもそもこれらの理論はそれを見出した人々によってさまざまなところで公開されているものでもあります。

ですから、我々普通の人間はともかく、ハーバードでMBAをとったような人であれば、そのいくつかは当然に知識として知っていてもおかしくないわけです。

それにもかかわらず、それらの人々の中にも幸せな人生を送ることができないケースがみられるのには理由があります。

それが、はっきりと目に見えるような成果がすぐに得られるようなことには積極的に自らの資源をつぎ込むことは容易にできるけれども、ちょっとした資源の投入ではほとんど成果が見られず、それが目に見えるようになるには非常に長い時間継続的に投入し続けなければならないことには、消極的になってしまうという人間の性質です。

この性質こそが、「理論」は正しいと分かってはいても、それを自分自身に当てはめることに失敗してしまう原因です。

具体的には、自分の収入をあげるようなことに直結する仕事に関わる努力は前者にあたり、立派な子供を育て、伴侶との信頼関係を作り上げることに関わる努力は後者にあたります。

著者は、人間にとっての本当の幸せは明らかに後者によって作り上げられると言います。そして、同時にあのスティーブ・ジョブズの次の臨終の言葉も思い出しました。

「私は、ビジネスの世界で、成功の頂点に君臨した。他の人の目には、私の人生は、成功の典型的な縮図に見えるだろう。しかし、仕事をのぞくと、喜びが少ない人生だった。人生の終わりには、富など、私が積み上げてきた人生の単なる事実でしかない。病気でベッドに寝ていると、人生が走馬灯のように思い出される。私がずっとプライドを持っていたこと、認められることや富は、迫る死を目の前にして色あせていき、何も意味をなさなくなっている。この暗闇の中で、生命維持装置のグリーンのライトが点滅するのを見つめ、機械的な音が耳に聞こえてくる。神の息を感じる。死がだんだんと近づいている。。。。今やっと理解したことがある。人生において十分にやっていけるだけの富を積み上げた後は、富とは関係のない他のことを追い求めた方が良い。もっと大切な何か他のこと。それは、人間関係や、芸術や、または若い頃からの夢かもしれない。終わりを知らない富の追求は、人を歪ませてしまう。私のようにね。神は、誰もの心の中に、富みによってもたらされた幻想ではなく、愛を感じさせるための「感覚」というものを与えてくださった。私が勝ち得た富は、死ぬ時に一緒に持っていけるものではない。私が持っていける物は、愛情にあふれた思い出だけだ。これこそが本当の豊かさであり、あなたとずっと一緒にいてくれるもの、あなたに力をあたえてくれるものあなたの道を照らしてくれるものだ。あなたの家族のために愛情を大切にしてください。あなたのパートーナーのために、あなたの友人のために。そして自分を丁寧に扱ってあげてください。他の人を大切にしてください。」

稀代の経営学者と経営者の両方が自らの死を意識した時に述べたことには、素直に耳を傾けざるを得ません。

 

 

 

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