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人類と病原菌

2021年8月27日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

以前ご紹介した人類の至宝と呼ばれる「銃・病原菌・鉄」よりテーマをいただいて書いていますが、第三回目のテーマは、本書が現在再びクローズアップされる理由ともなっている「人類と病原菌(病原体)」の関係についてです。

現在、私たちは新型コロナウィルスとの戦いを今まで体験したことのない厳しい戦いだと認識しています。

しかし、実は歴史上人類には、何度も「病原菌(病原体)」との戦いを強いられ、その度に勝利してきた実績があります。

ですから「人類と病原菌(病原体)の戦い」を歴史的にひも解くような「人類の共有財産」というべき「記録」に触れることができれば、今回のこの厳しい戦いをある程度余裕をもって進められるかもしれません。

本書は、間違いなくその「人類の共有財産」として認定される十分な資格があると思われます。

以下に、本書が「人類と病原菌(病原体)との関係」について触れている部分のうち特に興味深い内容を引用しながら、その関係のあらましを明らかにしたいと思います。

まず第一に本書は、「人類と病原菌(病原体)との関係」の始まりを以下のように「食料生産の開始」のタイミングだと明言しています。

「農耕生活によって、人類は一ヶ所に定住することで、平均して狩猟採集生活の10~100倍の人口を支えることができるようになったため、病原菌や寄生虫を含む自分たちの排せつ物が近くにある環境を作り出したり、生産した食糧を貯蔵することで、様々な感染症を媒介するげっ歯目(ネズミなど)に囲まれるようになった。つまり、病原菌は農業が実践されるようになってとてつもない繁殖環境を獲得したと言える。」

また、「病原菌」との戦いにおいて重要なのは我々人間の立場に立つだけでなく、次のように「病原菌」の立場に立って考えてみることだとも指摘しています。

「感染者である人間はいわば病原菌が住み着いた宿の主である。自分の宿主を殺してしまうことは結局は自分で自分を殺す自滅的な行為であるように思える。したがって大抵の病原菌は感染者が長く生きて菌を周囲に振りまき続け、自分の子孫が伝播できるように変化していくものなのだ。基本的に病原菌も我々人類と同様、自然淘汰の産物である。すなわち生物は進化の過程において自分の子孫を適正な生存環境にばらまくことで生き残る。病原菌にとってそれは、どれくらい多くの人間に次から次へと感染できるかという数学的な問題である。(人間を殺すことが目的ではない)病原菌はその進化の過程で宿主から別の宿主へ感染するための様々な手段を編み出してきた。自然淘汰においてはうまく伝播して感染個体の数を増やし、より多くの子孫を残すことができるものが結局は生き残る。病気になった時に出てくる様々な人間の『症状』は実は彼らが感染を広げる手段に人間の体の働きをいろいろ巧妙に変化されていることの表れなのである。」

このことからすると、今回の新型コロナウィルスの手段としては「飛沫」が最も有効なものだとされているようですが、私たち人間にとって「話す」という非常に重要で不可欠なコミュニケーション手段をその感染拡大の手段として用いるという選択をした彼らは、数ある病原体の中でも非常に巧妙であると言えるのではないでしょうか。

一方人間の側も彼らに対する防御手段を獲得してきました。つまり「人類と病原菌(病原体)の戦い」は、彼我の生き残りのための「いたちごっこ」だということが以下の指摘でよく分かります。

「人間の側の対抗手段としては、まずは忌々しい奴らは全部やっつけてしまえと言う『発熱』である。体温をあげることで自分たちが病原菌にやられる前に焼き殺そうというのである。もう一つの反応は、免疫システムだ。おもには白血球が侵入者を殺す。また、一旦感染するとその病原体に対する抗体が体内にできて再度かかりにくくなる。ところが、病原菌によってはこのシステムを持っても防げないものがある。彼らは人間の抗体が認識する抗原と呼ばれる部分を変化させ、免疫システムを誤魔化すからだ。史上最も厄介なのはエイズウィルスだ。彼らは感染者の体内で細菌やウイルスなどの病原体から体を守っているリンパ球などに感染するため免疫機能が低下する。しかも、抗原部分を変化させることで次々と変身し、やがては死に追いやってしまうのだ。」

この説明から分かることは、現在私たちが戦っている新型コロナウィルスというのは、私たちが昔から付き合っているコロナウィルスが変化して、今まで私たちの免疫システムが記憶している従来のコロナウィルスの抗原の形とは違う形の抗原に変化してしまったものだと言えそうです。

ですから、エイズウィルスと比べるとその危険度は圧倒的に低いことが分かります。

なぜなら、エイズは人間の体の中で次から次へと変化してしまうので、人間は半永久的に免疫システムを働かせることができず「不治の病」となるのに対し、新型コロナは人間にとって初めて見る「抗原」で初めて体に入ってしまったときは、免疫が働かないため大変なことになるけれど、エイズのように次々と変わるわけではないので、一度苦しみながらの戦いに勝ってしまえば、「抗体」ができ、次からはその人にとっては「新型」ではなくなるからです。

ですから、この新型コロナウィルスに対しては「ワクチン」の有効性が非常に高くなります。(遺伝子ワクチンの安全性はまた別問題ですが。こちらについてはこの記事をご参照ください。)

改めてこの関係性の歴史こそ私たちがコロナと向き合う上で知っておかなければならないものだと認識しました。

 

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