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低空飛行-この国のかたちへー

2022年5月18日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

以前にこのブログで「なぜデザインなのか」という本を取り上げ、「デザイン」はモノに装飾を施すことが目的なのではなく、「目的に到達する最短距離を発見する道筋を示すこと」が目的であるという定義を学びました。

このことは当時、デザインを単なる「装飾」と捉えていた私に非常に大きな衝撃を与えてくれて、それを非常に論理的に明らかにしてくれた本書の共著者でデザイナーの原研哉氏へのリスペクトをもたらしました。

その原研哉氏が「低空飛行-この国のかたちへー」という新しい本を出されましたのでさっそく読みました。

本書は、著者が毎月一回、紹介したい日本の場所や施設を訪ね、60秒の映像と文・写真の組み合わせで編集し発信する「低空飛行-High Resolution Tour-」という同タイトルのウェブサイトとともに、デザインという切り口で日本の近未来の可能性を考えるものです。

実際に読んでみると、著名デザイナーらしく客観的にデザインの「論理」を説くクールな視点と、それとは逆に奇抜ともいえるような独創的な視点が入り混じったような不思議な魅力を感じさせられるものでした。

その中で特に印象的だった部分を以下に引用します。

「グローバル化は世界の文化が混ぜ合わされて均質化し、グレーになるのではない。個別文化がそれぞれ個別に際立って全体として豊かになる、つまり『グローバル』と『ローカル』は決して対義語ではないのだ。」

気づかれた方も多かったかもしれませんが、著者のこの指摘はまさに私がこのブログにおいて何度も主張してきた「国際化」と「グローバル化」の違いと全く同一だと考えられます。

残念ながら日本は、長らく工業化に力を入れ「富」という尺度に偏った形で現在の地位を築いてきてしまったことから、自身がもともと持っている世界に誇るべき「ローカル(個別文化)」の素晴らしさを埋もれさせてきてしまいました。

これは、上記の意味での「グローバル化」に飲み込まれてしまったということでしょう。

著者が本書や同名のウェブサイトでやっていることは、まさに埋もれさせてしまった日本の価値を私たち日本人に再認識させること、すなわち「国際化」の重要性に目を向けさせることだと思います。

著者はその方法論として、「低空飛行」という手法を提案しているのですが、その主旨については著者は次のように明らかにしています。

「ジェット機の高度は1万メートルであり、雲が出ると地表はほとんど見えないが、プロペラ機は1,000メートルくらいなので手つかずの日本列島の姿がよく見える。『低空飛行』の領域にこそその価値が丸ごと残されているのだ。(一部加筆修正)」

非常に独創的かつ情熱あふれる一冊でした。

 

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