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公立小学校が「英語合宿」を制度化

2018年3月5日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

小学校英語導入に関連して非常に印象的なニュースが先日(2018年2月27日)ありましたのでご紹介します。

「福島県伊達郡の川俣町が小学校で外国語教育を推進する新学習指導要領の実施を前に、新年度、小学4、5、6年生を学年ごとに町内の合宿施設に集め、話す力に特化した英語教育を行う研修プログラムを導入する方針を固めた」

このようなニュースは普通に考えて誰もが好感をもって受け取るものだと思われます。

私としてもこういう各地域で前向きな取り組みをされている事例に対して批判的な意見をぶつけるのはどうも気が引けるのですが、敢えて英語教育の専門家として申し上げたいことがあります。

それは教育の重要性に基づく優先順位の問題についてです。

そもそも「小学校英語教育」の導入自体に反対する英語教育の専門家は非常に多くいます。

私もかなり強硬に反対するその一人なのですが、私たちが反対する理由の一つに小学校にそれを行う体制が整っていないという現状があります。

日本語と言語的距離の非常に大きい言語である英語を教えることは、ある程度分析的能力が備わった中学生に対してすら大変なものがあります。ましてや、まだそのような能力が備わっていない小学生に教えるということになれば、小学校教師には当然にして中学教師以上のスキルが求められます。

しかしながら、小学校の教師はもともと英語を教えるという前提で教師になっていない英語教育の素人です。

つまり、英語を教えることを前提に教師になった中学教師よりもずっと高度な目標を、英語教育の経験も情熱もない素人に対してもたせるということが制度として行われようとしているのです。

これによってもたらされる悪影響はどのようなものになるか計り知れません。

文科省には、少なくとも小学校英語導入を進めるのであれば、この問題を解決する戦略とその財政的裏付けを明らかにする責任があるはずです。

それなくして、導入の決定だけがなされて、それをもとに「真面目」な地方自治体が良かれと思って独自にこのような動きをされていることには、大きな違和感を感じざるを得ません。

自治体が本気でこの問題に取り組むためには、先にもっとやらなければならないことがたくさんあります。そしてやらなければならないことの量は現在の教育予算ではどうにもならないくらい深刻なものです。

しかも、川俣町はまだ英語の基礎が固まっていない小学生に対して英語合宿を提供しようとしているのですが、それよりも前に英語の基礎を身に付けてそれを使ってみる場所を必要とする中学生に対して十分な機会の提供をしているのでしょうか。

おそらく予算のことを考えればそれは十分には行われていないと思います。

教育についての優先順位、費用対効果といった公的なお金を使うために最低限なされなければならない検討がなされずに、物事が動いていくことに非常に大きな危機感を感じています。

 

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