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無罪請負人 刑事事件とは何か?

2021年12月24日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

ロス疑惑の三浦和義氏、郵便不正事件の村木厚子氏、薬害エイズ事件の安部英氏などの弁護人を務め、見事に無罪を勝ち取ったことで、そして最近では裁判が終わらないうちに国外逃亡してしまいましたがカルロスゴーン氏の弁護人を務めたことでも有名な弘中淳一郎弁護士の著者「無罪請負人 刑事事件とは何か?」を読みました。

本書を読む前の私の著者へのイメージは、上記の郵便不正事件の村木厚子氏のケース以外は、正直言って真っ黒な被告人を弁護の技術を弄して無罪にしたまさに「無罪請負人」というマイナスなものでした。

しかし、読後のイメージは全てのケースにおいて完全にとは言わないまでもそのイメージは改善され、少なくとも彼のような弁護士の存在の重要性を理解するまでに至りました。

私のイメージがここまで変わった理由については、以下に引用する日本の司法制度の問題点とそれに対抗する彼の弁護士としてのスタンスを説明した文章をお読みいただければと思います。

◆日本の司法制度の問題点

「冤罪事件には共通する構造がある。予断と偏見からなる事件の設定とストーリー作り、脅しや誘導による自白の強要、否認する被告人の長期勾留、裁判所の供述調書の偏重。社会的関心を集める事件では、これにマスコミへの捜査情報リークを利用した世論操作が加わる。日本の刑事裁判がもつこうした構造は、事件の大小、被疑者の有名無名に関わらない。特捜検察をはじめとする操作当局の問題点は日本の刑事裁判全体にかかわる問題であり、構造的と言っていい問題であると思う。」

◆弁護士としてのスタンス

「そもそも弁護士はあらゆることについて予断や偏見を持つべきではない。最も持ってはいけない職業だと思う。たとえマスコミがどのように報じ、世間がどう噂しようと、私は依頼人に対して先入観をもって接することはしない。弁護士のもとに来るのは、捜査当局や世間から不当に弾圧されたり、非難されたりしている人たちだ。悪人とみなされて、様々な被害を受けているからこそ、弁護士を頼ってくるのである。それを『社会の敵』『悪人』とみなせば、弁護士の存在意義はなくなる。依頼人のことを信じる、あるいは好感を持つという姿勢は、良心とかヒューマニズムといった問題ではなくて、弁護活動と本質的なかかわりがあると私は思っている。」

もちろん、私も本書を読んだだけで著者が扱って無罪を勝ち取った全てのケースにおいて「本当にシロ」だったと断言できるようなものではありません。

しかしながら、本書には日本の司法制度が問題点を抱えていて、それによって実際に不当な扱いを受けているという「社会不正義」が存在しているということを理解するのに十分な恐ろしい実例が多数紹介されています。

この様な日本社会の状況下では、著者のようなスタンスを持つ弁護士の存在を積極的に認めるという選択肢の方がそうでない選択肢よりも少なくともより合理的ではあると考えざるを得なくなります。

また、このような恐ろしい実態を明らかにされてしまうと、今度は逆に司法試験に合格したうえで敢えて検察官という職に就いた人々の志と実態とのギャップをどのようにとらえたらいいのか本当に分からなくなります。

是非今度は検察官の側から書かれた「刑事事件とは何か」についての本を読んでみたいと思います。