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「場当たり的」が会社を潰す

2020年3月9日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

コロナウィルスの猛威により世界が大混乱の中にあって、日本政府の対応が「場当たり的」だと批判されますが、今回はこの「場当たり的」という概念について考えてみたいと思います。

ちょうどズバリのタイトル「『場当たり的』が会社を潰す」という本がありましたので読んでみました。

まず、本書では「場当たり的」の定義を以下のようにしています。

「良質な戦略がない状態でとりあえず行動を起こすために方向性を決めること。そして、それによって成果の上がりそうにない戦術が非論理的に提示されること」

この定義を前提とすれば、「場当たり的」の対義語は「戦略的」ということになります。

そして、本書では「戦略的」であることを以下のように明らかにしようとしています。

まずは「強い思い(大目標)」がまず必要です。その思いを実現するために「戦略」を練り、具体的な「戦術」に落とし込んで実際の思考錯誤を行うことです。

それを野球を例にしてみてみますと、「強い思い」とは「絶対に勝つ」という思い。

そして、その状況が同点で回裏ノーアウト満塁の場面で自チームの投手の球には勢いがあり、スタミナがまだ残っているという場合における「戦略」とは、その「絶対に勝つ」という強い思いを実現するために、「次のバッターは内野ゴロを打たせないで三振で仕留める」というような監督が立てる「方針」を意味します。

この戦略を受けたバッテリーが、「1球目、内角をえぐるようなストレートでバッターをのけそらせておいて、2球目は外角のスライダーで、、、」という具合にやることを具体的にして順番をつけたものになります。

つまり、まずは「強い思い(大目標)」があるのが大前提で、その思いが強ければ強いほど、「方針」はブレない一貫性のあるものになり、そこから生み出される具体的な策も切れのあるものに自然となるというものです。

とはいうものの、冒頭の指摘の通り、世の中「場当たり的」な事例というのは非常にたくさんあるものですが、「戦略的」な事例にはなかなかお目にかかれません。

本書には非常に印象的で分かりやすい「戦略的」な事例として、かつて巨人軍が最も輝いていた時代の川上哲治監督の球団運営の様子が紹介されていたので、以下にそちらを引用しながら見ていきたいと思います。

「川上監督は日本シリーズを9連覇しています。そして、彼の口癖は『絶対に勝つ』でした。彼のその思いへの執着は尋常ではありません。彼の著書には次のような一節があります。『プロの値打ちは勝つことではなく、勝ち続けること。もっといえば、戦えば絶対に勝つことにある。百円玉を投げて例えば連続50回表になる確率を計算したら、百万人の人が一分間に10回の割合で投げて、毎日約6時間これを繰り返す。週に40時間、毎週、毎月、毎年たゆまず諦めずに続けたら900年に一回、達成できるのだそうだ。プロの世界で生きる限り、これくらいの意気込みを腹に据えておくべきだろう。戦うからにはその戦いには絶対に勝たなくてはならない。』」

これを読むと、彼の「強い思い」の強さがよく分かります。

「その目的を現実のものとするために彼が具体的に採用した戦略が、選手の『個』の力に頼らずにチーム力で勝つ戦法である『ドジャーズ戦法』。犠打やエンドランに代表される小技攻撃や陣形を駆使する守備を徹底する、それによって不確実性を少しでもなくすという方針です。」

巨人全盛時代ですから、長嶋や王といったスター選手が何人も在籍していたにも関わらず、この「強い思い」を実現するためにこの方針は一貫性をもって維持されました。

もちろん、他のチームだってプロ野球チームなのですから、「絶対に勝つ」と思わないわけではないはずです。しかし、川上監督には、その思いの強さ、それを実現するための戦略から導かれた戦術が、他チームのそれらと全く違うレベルにあったということです。

非常によく分かったと同時に、「場当たり的」にならないのは、そう簡単ではないということが強く印象付けられました。