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政界が人材不足となる理由

2021年1月20日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

前回、大前研一氏の「新・仕事力」をご紹介しましたが、こちらがいかに批判的な姿勢で読み進めても最終的に感じることは、著者の指摘がことごとく的を射ているなあということです。

それに関連して、一つ思い当たることがあります。

それは、大前研一氏に限らず、財界においては、例えば、ソフトバンクの孫社長、日本電産の永守社長、ファーストリテイリングの柳井社長など、この人の能力は計り知れないからと素直に「リーダーになってほしい」と心から思える人をあげることが結構簡単にできるのに対して、政界においては、なかなか具体的な顔が浮かんでこないということです。

実は、今回私は本書を読みながら、政界が人材不足となる理由に本書の著者大前研一氏が大きく関わっているのではないかという仮説にふと思い当たりました。

40代以上であれば覚えてらっしゃると思うのですが、著者は1995年に東京都知事選に出馬しましたが、「いじわるばあさん」のコントで有名な元作家でタレントの青島幸男氏に、供託金を没収される程の大差で敗れました。

このように、当時の一般的な見方としては、著者は泡沫候補の一人であり、ほぼ順当に敗退したという認識だったかもしれません。

しかしながら、この出来事は、経済に興味があって彼のバックグラウンドを知っている人間にとっては非常に大きなショックだったはずです。

というのも、当時彼は世界最高の戦略系コンサルファームであるマッキンゼーのアジア太平洋地区会長を辞したばかりであり、間違いなくその時点での世界最高峰の経営コンサルタントでした。

当時の彼の企業経営者に対する影響力の強さを知る指標として、1回当たりの講演料があげられるのですが、その金額が500万円を超える経営コンサルタントは世界でも数えられるくらいだったと言います。

現在でも東京都知事の月給が145万6千円ですから、当時、本人からすれば、収入もプライベートも犠牲にしなければならず、本当は「やってられない」という気持ちにもかかわらず、「東京都をどげんかしなきゃいかん!」というボランティア精神で出馬を決断したのだろうなと多くの経済人はみていたはずです。

しかも、本書でも言及がありましたが、現在もその必要性が頻繁に取りざたされる地方分権の議論の目玉である「道州制」は彼のアイデアであり、その導入を実現するために、東京都知事という枠にとどまらず全国の都道府県知事を束ねる知事連盟構想という中長期的なビジョンを掲げての出馬でした。

もし、彼が当選していたら東京都のみならず日本の形が大きく変わっていたかもしれません。

しかしながら結果は、供託金を没収される程の大差での「惨敗」であり、しかもその時当選したのが「いじわるばあさん」だったというわけです。

しかも、同年の大阪府知事選ではコメディアンの横山ノック氏が当選し、東京や大阪の改革は最近までほぼ放置され続けてしまいました。

政治の世界では、「政策」をいくら訴えても全く響かず、一般的な「知名度」と「話題性」のみが当否を左右するという現実を見せつけたというのが、1995年の東京都知事選挙ないしは大阪府知事選挙だったと言えます。

それでも、最近では橋下徹大阪府知事(大阪市長)がその中で実績を残しましたが、彼も初当選の時は「タレント弁護士」でした。

今から考えれば、おそらく橋下氏は大前氏の一件を教訓として、タレントとしての立場を「隠れ蓑」を使って当選したのではないかと思います。

その橋下氏は圧倒的な彼の行動力によって大阪府と大阪市の大改革を実行したのに続き、その二重行政を解消するという経営的には当り前の政策である「大阪都構想」を住民投票にかけましたが、わずかの差で否決されてしまいました。

つまり、その流れは基本的には今に至るまで続いていると言えます。

彼は、収入とプライベートを犠牲にした大阪府・大阪市のためにという当時の大前氏と同様のボランティア精神をもってしても、最終的な評価がなされなかったという不合理に絶望したかどうかは分かりませんが、現在ではきれいさっぱり政界から足を洗い、再びいきいきと「タレント弁護士」として大活躍をされています。

こうしてみてみると、政界が人材不足となる理由を作ってしまったのは紛れもなく、私たち大衆であることに間違いはないと思います。

 

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