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日本の脱炭素化への道

2021年6月21日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

世界的な脱炭素化への動きがかなり本格化してきました。

その中でも最もインパクトの大きいものとして自動車産業における「EV(電気自動車)化」の動きがあげられると思います。

日本は自動車業界において現時点にて最も成功している国であることは間違いないと思うのですが、実は日本は世界の自動車産業界の「EV(電気自動車)化」の動きに乗り遅れているのではないかという議論があります。

そして、その遅れが最も顕著なのが世界一の自動車製造業者に君臨するトヨタ自動車だと言われます。

というのも、現時点でトヨタを世界一の自動車メーカーにしているのはプリウスに代表される電気と内燃エンジンの「ハイブリッド車」であり、これがあまりにも成功しすぎているので、自らの成功体験を否定できなくなってしまう「イノベーションのジレンマ」に陥ってしまっているのではないかという議論があるからです。

また、「ハイブリッド車」の次を「電気」ではなく「水素」に張ってしまったことが失敗だったのではないかという議論もあります。

どちらにしても明らかに現時点での世界の潮流は「EV(電気自動車)化」なのに、トヨタはその動きに乗っていないことは事実のようです。

今後トヨタはこれをどう挽回していくのか、それともあのトヨタでさえ「イノベーションのジレンマ」にハマってしまうのかというのが現時点でのトヨタ自動車に向けられた世界の視線だと思います。

また、日本はEVに限らず、再生エネルギーについても遅れをとっているのではないか、いや遅れというより「石炭火力発電(もちろん発電効率を究極的に高めるものであるが)」に注力するなど世界の潮流の逆を行っているのではないかと批判すら受けている状況です。

どちらにしても、日本の脱炭素化への道は現時点では客観的に見るとメインストリームから外れていると言えることは間違いありません。

ただ、メインストリームから外れているからと言ってそれを完全に否定すべき事実とするかは別問題であるとして別角度からの評価を試みる記事が二つありました。

一つはトヨタについて「トヨタが水素に固執するこれだけの訳」というニューズウィークの記事です。

この記事のポイントは以下の通りです。

トヨタはハイブリッドを商業ベースで成功させているので、EVについてはそれから内燃エンジンをとってしまえばいくらでもEVはできてしまう。

それなのに、水素にこだわるのは水素が地球上で最も豊富な元素であるという事実を活かして、乗用車に限らず大型トラックや船舶を含めた大容量の需要に応えることだということです。

そしてもう一つは日本の国としての脱炭素について「日本がアンモニアに賭ける理由」というニュースピックスの記事です。

この記事のポイントは以下の通りです。

再生エネルギーの弱点は気象状況に左右されることで不安定だということにあります。つまり、安定性で言えば火力発電が最も優秀なわけです。

そこで日本が注目しているのが、アンモニアは化学式がNH3で燃焼しても、CO2が出ないという性質です。

すでに日本の火力発電の半分を担う火力会社JERAが、このアンモニアを火力発電に用いる実証実験を始めており、既存の石炭火力に徐々にアンモニアを混ぜ、最終的にはアンモニアだけを燃やしてCO2排出をゼロにする「ゼロ・エミッション火力」を2050年までに実現するという目標を掲げているとのことです。

ちなみに、アンモニア火力発電ではそれ自体を燃やしたいのではなく、アンモニアが含む水素元素を燃やしたいわけで、本質的には水素火力発電ということになります。

それではなぜアンモニアかと言えば、水素がマイナス253度という絶対零度に近い温度で輸送しなければならずそのハードルが高いのに対して、アンモニアはLNGとほぼ同じ扱いが可能だからです。

そしてこの最大のメリットは、それによって従来の発電設備にほとんど手を入れる必要がなく既存設備を少し改良するだけでよいということです。

一方、課題はアンモニアの供給です。

現在アンモニアは肥料の生産を中心に100万トン使用されていますが、それをすべて発電に仕向けたとしても全発電量の2%にしかなりませんので、圧倒的な増産体制をどのように敷くかということになります。

とかく私たちは、世界の潮流に乗っているかどうかについてのみ意識してしまいがちですが、この二つの記事を読むことで、「脱炭素化の目的」は何かを考えれば、その解決策がメインストリームかどうかはあまり問題にはならない気もしてきました。

 

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