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武雄市の奇跡

2015年1月7日 CATEGORY - 代表ブログ

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皆さん、こんにちは。

昨年末、九州へ行く機会がありました。富士山静岡空港から福岡まで飛行機で、福岡から佐世保までレンタカーを借りての結構な長旅でした。その道すがら、「武雄南IC」という高速看板が目に止まり、帰りにある場所に寄って行くことにしました。

ある場所とは「武雄市立図書館」です。

九州まで来てなぜ図書館?しかも市立の?と思われる方も多いとは思いますが、「武雄市」という言葉でピンと来る方が今では少なくないかもしれません。

そうです、日本で初めて市立図書館の運営を民間事業者であるツタヤとスターバックスに任せることでその公共サービスの民間委託解放の効果を最大限に発揮したということで有名になったあの武雄市です。

まず、この市立図書館は夜21:00までの営業でしかも年中無休です。しかも、スターバックスで買った商品はどこでも自由に飲みながら本を閲覧することができます。コーヒーを飲みながら読書する幸せを知っている人間からすると、「武雄市、あんたわかってるね~」といった感じです。(笑)そして、極めつけはセルフカウンターで一回本を借りると(もちろん市立図書館ですから無料です)Tポイントが3ポイントたまるのです。

しかも、これだけ圧倒的なサービスの向上があった上に、武雄市は運営者のツタヤから「家賃収入」を受けることができているのです。(もちろん、指定管理者としての業務委託費用は武雄市からツタヤには支払われた上ではありますが)

夕方17:00までの営業で、毎週月曜日や年末年始などで休み、そしてそれ以外にも特別整理日と称して定期的に休みが入る富士市立図書館とはとても同じ公共サービスとは思えません。もちろん、富士市立図書館では飲食は決められたところ以外一切禁止です。

武雄市立図書館において本の整理が年中無休体制でもできてしまうとなると、他の地域の図書館における「特定整理日」の存在は一体何なのかという疑問が浮かび上がってきます。しかも、税金でまかなわれている図書館の閉館時間が17:00であることは勤労納税者自身の利用に関してどのように考えているのかという不信感がより一層強くなってきてしまいます。

実際に、私はこのプロジェクトの発案実行者である前武雄市長樋渡氏(現在は佐賀県知事選出馬のため退任済み)の講演を聞いたことがあるのですが、このプロジェクト進行途中には多くの脅迫状が市長の自宅に届くなど、抵抗勢力の圧力が非常に強かったそうなのです。その時は、たかだか図書館の運営を民間委託することに「脅迫状」までかと思いましたが、実際に上記のような矛盾が明らかになってしまうと、その波紋は武雄市内のみならず、全国の公共サービスの存在意義にまで発展してしまうからなのかもしれません。

内部2

 

 

 

 

 

 

今回、実際に利用してみて、「公共サービス」を受けている気が全くしない、「最高」の読書体験ができる場所だというのが私の感想でした。この写真をご覧いただければ皆さんにもそう感じていただけるのではないでしょうか。もし、読書好きの私が武雄市民であったら、おそらく一年365日の大半をこの図書館で過ごすことになると思います。(笑)

このように、まず利用者よし、公共サービス提供者としての武雄市よし、そして指定管理者であるツタヤよし、の三方よしの仕組みが存在している以上、この仕組みを批判するなど絶対ありえないと思ってしまいます。私は、すべての自治体でこのような仕組みを取り入れるという方向性に行かない方がおかしいと思ったのですが、最後に出入り口付近のブースが目に入ってなんとなく、そうとばかりは言えないのではないかという観点が見えたような気がします。

映像館

 

 

 

 

 

 

そのブースとは、音楽/映像ブースです。

このブースは、ほぼ完全に普通のツタヤのDVD/CDの貸し出しコーナーが図書館の中に存在しているといった状態のものです。この状態を見て、「武雄市立図書館ばんざ~い」という100%支持の立場から、少し、批判的な見方をしてみるべきかもしれないという考えが私の中に生じてきました。

というのも、ツタヤはその多くがフランチャイズの仕組みで成り立っているわけであって、地方では地元企業がフランチャイジーとなって運営しています。その仕組みの中に、このような地方公共団体がツタヤの直営として契約をすることになれば、これなどは民業圧迫以外の何物でもないわけです。

そしてもう一つ、スタバにしても、その日は平日ではありましたが使用者の人数などを落ち着いて数えてみたうえで勘案すると(スタバにもツタヤ同様、指定管理者としてのフィーが支払われているのかどうかは分かりませんが)採算をとれるような回転率ではないように見受けられました。ということは、もしかすると、これはこの武雄市が全国で初めてこの仕組みを考案したので、否が応でも目立つからこそ、ツタヤやスタバも、ある程度事業としての採算を度外視しても、十分広告宣伝効果でカバーすることによって成り立つというビジネスなのではないかという疑問が浮かび上がってきました。

つまり、これを全国の図書館で同じことをやろうとしたらおそらく不可能ではないかという仮説が浮かび上がってきます。(私にはこの仮説の詳しい検証を試みることはできませんので、)もちろん、これは私の個人的な仮説にすぎません。

このように、「百聞は一見に如かず」と言いますが、実際に見てみると報道などで得られる情報だけでは見えてこない視点も見えてくるなと思います。そして、公共サービスの運営に対する批評というものが思った以上に難しいものだということも同時に感じました。

とはいえ、この武雄市立図書館は少なくとも私のテンションを最高に押しあげてくれた「公共サービス」であることは間違いありません。

 

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