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祇園の教訓

2021年3月24日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

世の中には大人になっても知ることのできない世界というものがあって、私にとってはおそらく死ぬまで経験できないだろうと思う「花柳界」のような世界もあります。

そんな「花柳界」の世界を垣間見せてくれる一冊を読みました。

11歳で京都祇園の名門置屋「岩崎」の跡取りとなり、29歳で現役引退をされた伝説の芸妓岩崎峰子氏が書かれた「祇園の教訓」です。

本書を読んで非常に勉強になったなと感じたのは「粋」という言葉の意味です。

「粋とは人から自分がどのように見えているか、清潔に見えているかどうかという『美意識を踏まえた生活理念』である。」

また、それは「楽(楽しさ)」という自分自身の内心の状態にも関係してくるものでもあることを学ぶことができました。

それは以下のような「チップ」に関するお話によって理解することができました。

「海外に行くとチップの習慣がありとかく日本人は面倒なことのように思うようです。でも、ちょっとした心づけをすることでお互い気持ちよく過ごせるという場面があります。あるサービスを受けてとても満足した場合、お支払いをするときに『今日はとてもおいしかった。ごちそう様』と少しばかりの心づけを渡すのです。又は、おつりを『取っておいてください』と断る方法もあります。スタッフはとても喜ぶでしょう。誰だって仕事をしてお客様に喜ばれたらうれしいものです。たとえそれが四千八百円の支払いで五千円を出したおつりをご祝儀にだとわずかな額でもいいのです。次にそのお店に行った時の態度も変わってくるでしょう。それよりなにより、あなた自身がそこで過ごした時間がさらに楽しいものだと感じることができるのです。」

う~ん、「粋」と「楽」が裏表の関係にあることがじんわり分かったような気がしました。

そして、その二つが表裏一体をなすことによって「美意識を踏まえた生活理念」を意味するということがしっかりと理解できたような気がします。

また、もう一つ、実際に経験していないと理解できない花柳界の「一見さんお断り」のルールについてもその真意について知ることができました。

著者は次のようなエピソードを添えて「一見さんお断り」の「真意」を伝えてくれています。

「ある有名なお茶屋さんの前で一人の男性が、『お金はいくらでもあるから、祇園で遊びたい』と言って動かないのです。見ると玄関には札束が山のように積まれています。どうやらこのお金を全部使ってもいいと言うつもりらしいのです。応対したお茶屋さんは困り切って、お座敷が空いていないと言って断りました。もちろん、それは口実です。また、信用や信頼のおけるお客様のご紹介はそのまま、その方の信用につながります。仮に紹介を受けたお客様が不義理をするような方の場合は、『その節、ご紹介いただいた方、お気を付けください』とご紹介いただいた方に連絡が入れることになります。そこでその方に信用や信頼がないことが全国の花柳界に知れ渡り、二度と遊べなくなります。ちょっと冷たいようですが、これは信用のおける人を心からもてなしたいという京都の花柳界ならではの習慣です。お金で買えないものはたくさんあります。その中でも一番買うことのできないものが『信用』です。」

これを聞いてしまうと、昨今のコロナ禍でその「信用」の意味が問い直されているように思います。

例えば、「超一流ホテル」がGOTOキャンペーンを利用したお客の「ふるまい」に困惑しているというニュースを耳にしますが、それはお客というよりは、一流ホテル側の「信用」にかかわる問題ではないかと思ってしまいます。

たしかに、このコロナ禍は観光業界には大変な衝撃を与えていることは間違いないですが、信用や信頼は著者が言うように何十年も積み重ねることでやっと作り出すことができるものです。

そうでなければ、「超一流」ではなくなってしまいます。

もちろん、そのような「ふるまい」をするお客は「超一流」でないことは確かです。ですが、そのようなお客を受け入れた結果、「困惑している」ことを世間に明らかにしてしまうホテル側も「超一流」と自己評価できるかどうかを自問すべきではないでしょうか。

厳しいことを言うようですが、まさにこの時こそ、「粋」であるか、そして「信用」があるかどうかを試されているということではないでしょうか。

このコロナ禍は様々なことを図らずも白日の下にさらしてしまったように思います。

 

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