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絶対悲観主義

2022年6月26日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

私が経営学者として尊敬申し上げている一橋大学の楠木教授ですが、ここのところ共著の出版が多かったのですが、久しぶりの単独出版本のご紹介します。

ただ、「絶対悲観主義」というあまりイメージのよろしくないタイトルで、読み始めるまでに少し勇気が必要だったのですが、読み始めるとさすが、説得力のある内容でした。

まず初めに著者が掲げる「全体悲観主義」の定義を明らかにします。

「自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中には一つもないという前提で仕事をする。厳しいようで緩い。緩いようで厳しい。でも、根本においてはわりと緩い哲学です。」

いや、定義を明らかにするとより一層、イメージがよろしくなくなりそうなのですが、読み進めていくにしたがって、説得力がぐんぐん増していきます。

著者は、このような前提で生きることで次のようなメリットを享受できると言います。

「人間の本性を表す言葉に『他人の不幸は蜜の味』というのがあります。他人の不幸を知れば相対的に自分が幸せであるかのような気分になれます。この性質は多かれ少なかれどんな人間にもあるのですが、その本質は刹那的疑似幸福の罠だと言えます。つまり、その幸せは自分が変化していない以上、疑似、あくまでも比較の産物なのです。そうなると、『自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中には一つもない』という前提で生活するということは、その比較の基準が限りなく低く設定されているので、物事の結果に対して悲観的になるリスクが低く抑えられるという逆説的な効果が得られるのです。このように成功の呪縛から自由になれれば、目の前の仕事に気楽に取り組み、淡々とやり続けることができるのです。」

どうでしょうか、かなり説得力が増してきたように思いませんか?まだまだ?ではもう少し、著者の解説を引用して説得を試みましょう。

「上記のように人間の本性は基本的に幸福を相対的にとらえることで共通していると考えられますが、その幸福に対する構えで微分派と積分派に分かれます。前者は、直前と現在の変化の大きさ(率)に幸せを感じるタイプ、一方後者は、その時点での変化率よりも、これまでに経験した大小の幸せを過去からび累積(量)に幸せを感じます。僕は完全に積分派です。本を作る時でもベストセラーよりもロングセラーになってほしい。じわじわ読者が広がっていく方がいい。『少し愛して、長く愛して』が理想です。」

私もどちらかと言えばロングセラー派なので、この時点で十分に説得させられ、共感することができたのですが、ベストセラー派の人にももう少し納得してもらえるように最後にこの分類をビジネスへ適用した考え方を引用します。

「どんな企業にとってもブランドは非常に大切なものですが、『ブランディング』という考え方については僕はどちらかというと懐疑的です。なぜならブランドは毎日の商売の積み重ねでだんだんと信用が形成されて気がついて見るとその総体がブランドになっているというものであり、動名詞の『ブランディング』よりも、過去分詞の『ブランデッド』であるべきだと考えるからです。ビジネスの本質はまさに微分派ではなく積分派であるべきで、やはり『少し愛して、長く愛して』が理想です。」

いや~。読み始め時点でどうなることかと思ったのですが、最終的には完全に説得されてしまいました。

「他人と比較することでしか幸せを感じることができない」

という人間の本性を根本的には変えることができないのであれば、その比較の基準を限りなく低く設定することで、相対的に不幸感を感じるリスクを減らしつつ、なおかつ自らが反応する「幸せ」観をできるだけ「少し愛して、長く愛して(積分派)」的なものとすることで仕事の成果につなげ、他者との比較自体が有利になる可能性を高めることができる。

著者の本は何冊もご紹介していますが、決して外すことがない経営学者だと思います。

 

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