翻訳システムの正しい使い方
2020年2月24日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
先日(2020年2月17日)の読売新聞朝刊に「誤訳」に関する非常に興味深い記事がありましたので以下にその要約をします。
「新型肺炎の国内感染が広がる中、厚生労働省が予防策などを記載し た特設ウェブサイトの外国語版に誤訳が相次ぎ、訪日外国人らが困惑 している。日本語サイトからの自動翻訳の精度不足が原因で、専門家は『国がチェック策を講じるべきだ』と指摘する。厚労省は、<100%の正確さを保証するものではありません>という但書を入れつつ、『誤訳の指摘が度々あり、新型コロナウィルスに関する情報のあり方については対応を検討する』としている。」
具体的には以下のような非常に「初歩的」な誤訳があったようです。
◆日本語:「国民の皆様におかれましては」
→ 中国語:「在国民中上(里)被放置 (国民の中に置かれる)」
◆日本語:「手洗いなどの実施がとても重要です」
→ 韓国語:「화장실 등의 실시가 정말 중요합니다( トイレなどの実施がとても重要です)」
◆日本語:「【問5】潜伏期間はどのくらいありますか?」
→英語:「How much is there 5 incubation stages of question (質問の5つの潜伏段階はどのくらいありますか)」
上記の具体例はどれもこれも、機械翻訳ではありがちな超初歩的なものであり、ちょっとその言語を理解している人がさっとチェックを入れるだけで、簡単に修正できる範囲のものです。
これらが、厚生労働省の特設ウェブサイトの外国版で発生したケースということを考えると、このレベルの「誤訳」というのは考えられないほど低レベルだと言わざるを得ません。
私は、機械翻訳の進化に対しては非常に高い評価をしていて、ここ最近では長文の英語を書くときなどはまず日本語をグーグル翻訳に入れることから始めるようにしています。
そこから得られる英文は、体感的には95%以上の正確性があると感じています。
おそらく、この厚生省が活用しているシステムも少なくとも無料で使用できるグーグルのそれと同じくらいの正確性を持っていると思われますので、今回発生した「誤訳」はのこりの5%の範囲に含まれるものだと思います。
実際に、厚労省の公開した長い文章の中で「誤訳」として指摘されたものは上記以外にあったとしても私の感覚はそれほど頓珍漢なものではないと思います。
ということは、機械翻訳によって出された翻訳文に対するチェックはざっと目を通すだけでできてしまうはずなのです。
しかし、厚生労働省はこれだけ重要性の高いサイトの翻訳にすら、この5%に満たない労力をかけることをしませんでした。
つまり、この問題の本質は、厚生労働省としてこれだけの重大な文書に対して「機械翻訳システムを利用した」ということではなく、「ほんの少しの手間さえも外国人の命を守るために使わなかった」ことにあると考えます。
これは、日本が今後人口減少に苦しみ、その解決方法として多くの外国人にこの国で気持ちよく働いていただくことを選択肢とするのが不可避な状況にある中で、絶対にとるべきでない姿勢であると強く思いました。