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中国が脱炭素に舵を切った理由

2021年10月6日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

これまで、複数回にわたって「中国経済の属国ニッポン」という本からテーマをいただいて書いてきましたが、今回が最終回です。

そして、最終回のテーマは「中国の脱炭素化への取り組み」です。

以前にこのブログにて「SDGsの正体」という本を紹介して、日本人にはSDGsに純真な気持ちで取り組むべきだと思っている人が多いが、実は「SDGsは欧米先進国によるマッチポンプ(自作自演)による我田引水の運動である」ことを理解した上でしたたかに取り組むべき運動だということを学びました。

というのも、欧米先進国の我田引水の運動の真の目的は、中国やインドを筆頭にこれからも成長余力があるが技術的には発展途上である国々に対してこれからも経済優位性を持ち続けるため、新興国にとっての不利な土俵を作るにあたり、誰から見ても正当に見える理由を用意することだからです。

(もちろん、その動機には眉を顰めたくもなりますが、この運動自体は地球環境にとっては必要なことであることは事実です。)

まずは、具体的にSDGsなどを通じて欧米先進国が行おうとした我田引水がどのような仕組で実現されるのかが気になるわけですが、その具体的なイメージは実は「SDGsの正体」の中では示されていませんでした。

ですが、本書「中国経済の属国ニッポン」ではその仕組み、すなわちなぜ脱炭素がお金につながるのかを納得のいく形で示してくれていましたので以下引用します。

「世界的な低金利が続いているのは実はファンダメンタルズ的な理由があるとの見解があります。それはITの普及によってあらゆる産業の限界コストが低下し、設備投資資金に対する需要が低迷しているということです。分かりやすい例で言えば、従来の時代であれば、宿泊施設を用意するにはホテルを建設する必要があり、そこには多くの資金が必要でした。ところが民泊サイトであるAirbnbであればもともとある住宅を転用するだけですから新規の設備は必要とせずに需要を取り込めます。このようにITはあらゆる分野においてマネーを必要としなくしてしまいます。しかし、これは国際金融資本にとってはこれは大きな問題です。そこで浮上してきたのが脱炭素シフトです。脱炭素の実現にはかなりの資金が必要となるので行き場を失った資本にとっては高いリターンを得られる大きなチャンスとなります。そしてこのことは誤解を恐れずに言えば、大量の二酸化炭素を排出する従来型製造業を誰に押し付けるのかというある種のババ抜きゲームとなります。鎖国でもしない限り、このゲームへの不参加は許容されませんので、ババを引かないためには輸出主導型経済から消費主導型経済にシフトするしか道はありません。」

つまり、欧米主導で広めたITによって需要が減少した結果あまった資金の行き場を、すでに先進国のみがもつ先進技術でしか対応できない「脱炭素」スタンダードを作ることで、中国やインドなどの新興国がこれからも発展させようと思っている工業分野における炭素の排出にはお金がかかる仕組みを作ってしまえば、旧産業構造にとどまって経済発展を目指す新興国に経済的主導権を握られずに済むという意図です。

これは、地球のことを考えればごもっとものことですし、もはや避けては通れないのですが、地球をここまで痛めつけた張本人である先進国が、新興国がこれから追いつき豊かになろうとする出鼻をくじくために土俵自体を変えてしまうことであり、新興国から見れば「ズルい」手以外の何物でもないことだと思います。

とは言え、本書ではそのように「ズルい」先進国の目論見が、思ったほどには中国に通用しないのではないかという見通しが示されていましたので以下にその部分について引用します。

「これまで新興国として工業生産を急激に伸ばし、現時点で世界の約28%というダントツのCO2排出量を占める中国が2020年9月の国連総会において、2060年までにCO2の排出量を実質ゼロにする方針を表明して各国を驚かせました。このように脱炭素が進むと不利になるはずの中国が方針を大転換して脱炭素に舵を切ったのには主に二つの理由があります。一つは国際的な脱炭素の流れが不可避であり、この流れに逆らうと確実に国際交渉で不利になるという現実がはっきりしたこと。もう一つは自国がもつ環境技術を駆使すれば、むしろ脱炭素社会をリードできる可能性が見えてきたことです。具体的には、国内での電力確保のためにエネルギーを輸入するのではなく、国内各地に無数の小規模な太陽光などの最エネ発電所を作り、ソフトウェアによってそれらを統合(スマートグリッドの構築)することが可能だと判断した可能性が高いです。これは中国が旧来の工業化を進める傍ら、最先端のアメリカに次ぐ高度なソフトウェア技術を蓄積してきた努力の賜物です。脱炭素で不利になる面を差し引いてもプラスの効果が大きいと判断した可能性は高いでしょう。」

このように見てくると、世界的な「脱炭素」への動きは地球環境を守るためのボランティア活動などでは決してなく、次世代の国家覇権を賭けた熾烈な経済戦争であるということがよく分かります。

中国もそのことを完全に理解したからこそ、現時点では自国にとって最も分の悪い戦いではあっても、冷徹に自己・競合分析を行い、その土俵での所裏的な勝機を見出したことで宣戦布告したというのが正しい見立てだと思います。

現状では圧倒的不利な世界最大のCO2排出国の中国でさえこのような判断をしたという事実を、私たち日本人がただ単に「へ~、中国も頑張ばるんだ」くらいの感覚でとらえてしまうとしたら、間違いなく取り返しのつかない遅れをとってしまうことになるでしょう。

 

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