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貧乏宰相のススメ

2016年5月25日 CATEGORY - 代表ブログ

舛添要一

 

 

 

 

 

 

 

皆さん、こんにちは。

だいぶ前ですが、「持続可能な生活」という記事の中で、世界一貧乏な大統領といわれたホセ・ムシカ氏の伝説の国連演説をご紹介しました。その時はじめてホセ・ムシカ氏の存在を知ったのですが、今回、彼の生涯を描いた「ホセ・ムシカ 世界で一番貧しい大統領」を読みましたのでそのことについて書きます。

と言いながら、冒頭の写真ですが、意図はご理解ください。(笑)

政治家としてトップを務める、もしくは目指す人は大きく二つのパターンに分けられると思います。

一つは、トップをとって何をすべきかを理解しており、それが明確な課題にまで落とし込めている人のパターン。そして、もう一つは、トップをとること自体が目的である人のパターンです。

前者の人がトップになった場合、当然にして生き急ぐことになります。なぜなら、その人がトップになったところがどんなに素晴らしい国や地域だったとしても、課題はほぼ無限にあるため、自分で明確に設定した課題の解決以外に興味の対象を持つことが自動的に不可能になるからです。

もしかしたら、大阪の橋下さんは、生き急ぎ過ぎてしまった例かも知れません。

後者の人がトップになった場合、すでにその目的は、トップになった時点で達成されてしまっているので、生き急ぐ必要はなく、その人にとってはそこからの時間は全て自分にとっての「お楽しみ」の時間となり、有権者にとっては、「悲劇」の時間となります。

その例として、冒頭の写真ということでしょうか。

本書は、彼の政治家としての実績評価はともかく、強烈な前者のタイプの政治家の生き様が詳しく描かれているものでした。

本書から、その生きざまが分かるような彼の言葉を引用して、政治家とはどういう存在なのかということを考えてみたいと思います。

「カネのために政治家になったわけじゃないし、カネにはもともと興味がないんだ。カネが好きな連中に反対なわけではないが、カネと政治は区別せねばならない。」

実際に彼は、大統領就任当初から自分の給料の7割を貧困層向けの住宅建設のために寄付することを発表し、任期が終了するまでその通り実行して、総額50万ドル近くを提供しました。

もう一つ、少し長いですが引用します。

「一般市民と統治者の間にアパルトヘイトが生じることがある。生活スタイルというのは一見とるに足らないことのように見えるが、そうじゃない。そこには政治家に対する不信感もある。国民は、大統領になるやつはみんな同じだと思っていて、最後には政治にものすごい不信感をもつようになるんだ。これは深刻な問題でだからこそ私は戦おうとしているんだ。だがよく聞けよ、私には自分のスタイルってものがあるが、私と同じ生き方をしていない奴らを非難するわけじゃない。私にはものすごい金持ちの友達だっているし、そいつらのことは高く評価している。私の生き方を他人に押し付けようとしているわけでもない。だが、政治と、大多数の国民との間には隔たりがある。多くの人が私を気に入ってくれているのは、私が大統領であることを鼻にかけないからじゃないかと思うんだ。人が自分を正当化するために用いる言い訳の数は半端ない。このとんでもなく非効率な政府では、何でもかんでも正当と認められてしまうわけで。こういう連中は絵空事のような世界で暮らし、権力者におべっかを言っているだけのごますり連中に囲まれるようになるのさ。これは危険極まりない。だが、これと同じ状況をいろんなところで見てきた。」

彼は、自国でも海外でも着るものにもあまり気を使わず、就任してからずっと薄汚い格子柄の上着を着ていたので、すっかりそれが彼のトレードマークになってしまいました。この事実を見て、彼をただの変わり者として評価する人もいるかと思います。

しかし、上記の言葉を聞けば、彼がただ変わり者だったのではなく、「政治家」という特殊な仕事に就いた自分の責任として意識してやっていたことなんだということに気づかされます。

そんな元来的に特殊で居心地の悪い職業を選択するのが嫌なら、そんな選択をしなければいいわけです。彼が言うように、お金が好きな人は、お金を集めることで評価される職業を選べばいいわけですから。

しかしながら、我が日本国では、そんな特殊な仕事である「政治家」にこそ、お金に興味がある人が多いという残念なことになっているように思えてなりません。

 

 

 

 

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