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里山の資本主義化

2014年9月10日 CATEGORY - 代表ブログ

人生、いろどり

 

 

 

 

 

 

 

皆さん、こんにちは。

以前に「持続可能な生き方」の記事で里山資本主義について書きました。まさに、その実践を描いた映画を見ましたので今回ご紹介します。

人生、いろどり」という映画です。

この映画は、徳島県上勝町における、農協職員と高齢者の女性を中心として、町で採集した植物の葉などを料理店で使用される「つまもの」として販売するビジネスで成功を収めた「いろどり事業」の軌跡を描いたものです。

ようするに、過疎にあえぐ里山がその土地の資源である「はっぱ」をもとに活性化していくという流れを映画化したというものですが、実際にこの映画を見るまではそのような話が、どのようにして全国ロードショーに耐えうるコンテンツとなりうるのかと正直疑問でした。

しかし、実際にはドラマとしての価値の高さはもとより、全国の同じように過疎にあえぐ里山に暮らす人々に対する啓蒙教材としても素晴らしい内容でした。

この「里山の奇跡」の立役者はやはりこの事業のプロデューサーである農協職員の横内知二氏(ドラマでは江田晴彦)であることは間違いありません。

彼は、若者に見捨てられた「なにもない」里山の資源をゼロから精査して、自らの商品を「葉っぱ」と定めます。その後は、その「商品」を潜在的な需要にマッチさせる努力をひたすら行います。この努力のプロセスがこの映画そのものです。

「ただの葉っぱが商品になるわけがない」という固定概念にとらわれず、まずは実際にその需要を探ります。具体的には都市の料亭に体当たりで教えを乞うなど、自らの足でいわゆるマーケティングリサーチを行います。それによってまずは、各料理の皿ごとに求められる「つまもの」の規格を熟知します。

そして、その結果明らかになった情報をもとに商品供給の仕組み作ります。供給の仕組みができたら今度は梱包やパンフレットなどデザインの向上などによるブランド力の強化をおこないます。

このように一通りの形を作ったら顧客からのフィードバックによる改善のサイクルをぐるぐる回します。それらの仕組みにはインターネットをはじめとする情報技術の活用は外せません。

上記のような単なる「葉っぱ」を「商品」にするビジネスの仕組みをきっちり確立していくのです。けっして、「年寄りだから」というような言い訳はしません。

それだけではありません。彼らは長い間ずっと若者の流出に悩まされた経験を持つため、「後継者対策」もしっかり行っていくようになります。具体的には、メディアを活用するなどしてこのビジネスの魅力を全国に発信し、若い労働力を引き付け、集めた人材に対して研修を行うシステムを構築します。まさに「持続可能」なビジネスを確立します。

物語の中では、前回の記事で取り扱ったGDP換算できない価値、すなわち高齢者たちの「やりがい」「社会に求められる幸せ」などの重要性が主に描かれているような気がします。

しかし、最終的には年商2億6千万円のビジネスにまで到達します。これは、この地域の中の既に存在する資源のみを活用し、労働力だけで完結する仕組みとしては非常に立派なビジネス規模だと言えると思います。

このように「いろどり事業」は一つの産業として成立しているわけですから「GDP的にも」結果は表れています。おばあちゃんたちが自ら稼いだお金で、おしゃれな服や美容院でのおめかしなどでこぼすお金もその波及効果には違いありません。

ですから、GDP換算できない価値を重視するズバリ里山資本主義のケースというよりはむしろ、里山の資源を「マネー資本主義」に組み込む逆パターンを見たような気がします。

 

 

 

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