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10年後に食える仕事、食えない仕事

2020年6月13日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

コロナ危機が起きる前の日本では、AIに仕事を奪われることで、「失業者が続出する」というのと、少子高齢化で「働き手が不足しまくる」という全く逆の危機感が並立するよく考えるとおかしな状況がありました。

前者の視点で警鐘を鳴らす識者の多くは、人間の知能をAIが越えるという特異点(シンギュラリティ)に到達する過程において、人間の「仕事」と考えられているものが段階的に減っていくと言う点においては共通していましたが、その先のシナリオは二つに分かれます。

それは、その結末として、「食えない人が町中にあふれる」というものと、私も以前の記事で書いたように「ほぼすべての仕事をAIがやってくれるためBI(ベーシックインカム)によって人間は労働から解放される」という二つです。

今回ご紹介するのは、前者について、単なる机上の予測ではなく、ITの最前線に身を置く著者が実際の現場の視点からこの問題を分析した「10年後に食える仕事、食えない仕事」という本です。

本書を読んでみると、本書はこのいずれとも違った分析をされていることに気づきます。

何というか、現場を知り抜いている人の「落ち着いた分析」というべきか、すべての内容が現実的な視点で貫かれているのです。

というのも、著者はAI側の視点のみで物を考えるのではなく、常にAIと人間の現実的な「強み」と「弱み」、それから「ビジネス」を回すという視点から目をそらさずに、地に足の着いた分析を一貫して行っているのです。

例えば、上記の「シンギュラリティ」についても次のような冷静で辛辣な指摘をされています。

「たいていの学者が語る数十年後の未来は誇大妄想的だ。これはそういわないと巨額の研究費を集められない事情からきている。まだ人間の脳すら全く解明されていないというのに、なぜそれを機械が越えられるのかどうか検討できるのか。明らかに間違っており、『希望』や『妄想』の類をビジネス利用しているのは明らかだ。」

つまり、来るべき未来の姿は、AIがすべて人間に取って代わり、尚且つより良い仕事をすべてこなしてしまうということではなく、AIの強みを最大限に引き出すことで、AIやそれを搭載したロボットが執行できるレベルのものはそれらにやらせ、人間の強みをそのAIと組み合わせることでどちらか単体よりも人間にとってよりよい結果を手にすることだということです。

著者の分析から、人間よりもロボットの方に強みがある分野の仕事の移行についてもそれは漸次的に進みながら、人間に強みがある分野の仕事の単価もそれとともに上がっていくため、人間の価値はAIの存在によって高められることになるということを非常に具体的に理解できました。

この本を読んではっきりと分かったことがあります。

それは、「AIに仕事を奪われる」という発想は、すなわち「人間の尊厳を自ら貶める」発想だということです。

なぜなら、「コピぺ」で済んでしまうことを、1000回も2000回も自らの手書きでやり切る仕事をしているものを「仕事」としてやり続けながら、「PCに取って代わられたら困る」と言い続けていることと同じだからです。

すべての人間は常に、今やっている仕事がAIにもできないか、もしくはAIの方が合理的にできないかと自問自答を繰り返す行動様式を身に着けるべきです。

AIの発展は人間の発展そのものであるという「パラダイムシフト」を私たちに訴えているような気がしました。

 

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