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2025年東京不動産大暴落

2025年5月7日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

本書「2025年東京不動産大暴落」は2017年の出版された本です。

なかなか私のブログには登場しないジャンルの本だと思われるかもしれませんが、実はランゲッジ・ヴィレッジを運営する大芳産業株式会社は「不動産事業」も行っていますので、私は不動産関連の書籍もそこそこ読んではいます。

それでも、前述したように本書は2017年発刊ですのでかなり古い本をなぜ今更?と思われるでしょう。

これは以前にご紹介した一橋大学の楠木教授の「逆・タイムマシーン経営」を読んでからというもの、「歴史を読み返すことによって、それぞれが現在進行形で起こっていたまさにその時に世の中がどのように考え、行動していたかを確認することで物事の本質を浮き彫りにする」ことを時々実践するようになり、本書がその題材としてピッタリだと確信したからです。(特に、「2025年」という年を明確に指定している点がとても興味をそそります。)

ということで、2025年現在の東京の不動産市況を見てみると未だ東京の不動産、特にマンション価格は暴落するどころか上がり続けており、結論的には本書の「予測」はものの見事に外しており、「逆・タイム化シーン経営」的見方のサンプルとして非常に興味深いものだったということになりました。

ただ、結論的にはそうであっても、私の従来からの疑問にきちんと納得いく形で答えてくれているところがあり、個人的に「良書」だと判断しましたのでここでご紹介することにしました。

その疑問とは、「なぜ東京(をはじめとする大都市部)の不動産は利回りが低くなるのか」というものです。

もう少し分かりやすくこの疑問について説明すると、本書の予測が見事に外れたように、東京の「不動産価格」は上がり続けている一方で、「賃料」は上がらない、もしくは下がっている、その結果「利回りが低い」状態となっている理由がずっと分からなかったのです。

実際、わが社が立地する静岡県富士市の「不動産価格」はずっと変わらないかむしろ少しずつ下がっていますが、逆に「賃料」は変わらないかもしくは少し上がっているので、東京の2~3倍の利回りを確保することができているので、この疑問は非常に大きなものでした。

では以下にその該当部分を引用してみます。

「なぜ東京の不動産価格がバブル的に上昇したにもかかわらず、同じエリアの賃料が上がらないのかを説明しよう。それは実に簡単な理由である。なぜなら、賃料は常に『需要と供給の関係』によってのみ決まるからだ。そこには*1相続税対策もなければ*2中国人による爆買いもない。市場で募集を行う不動産の供給量とそれを借りたい人々の需要が生み出すバランスによって賃料が決まっていくのだ。供給が多くなれば、賃料は自然と下落する。需要が少なくなっても下落する。ただそれだけだ。」

「*1相続税対策」とは、2015年に相続税の控除に関する計算式が変更となり、従来よりも少ない相続財産であっても相続税がかかるケースが増えたため、相続財産は現金よりも不動産の方が低く評価されるというルールを活用して現金を不動産に変える、つまり不動産の購入ケースが増加したという事実を指しています。

「*2中国人による爆買い」とは、中国は共産主義であり私有財産は認められず、土地を所有することはできないという建前がある一方で、日本は世界で最も私有財産権が守られる国の一つであることと、割安かつ建物も高品質であるため中国人がこぞって東京の不動産を爆買いするという動きが続いている点を指しています。

また、それ以外にそしてこれが最大の要因だと思われますが、アベノミクスの一環である日銀の異次元の金融緩和によって市中に流れたキャッシュが行き場を不動産市場に求めたことから空前の不動産ブームに沸いているという事情があります。

これらが複合的に東京を中心とする大都市圏の「不動産価格」を押し上げているのに対して、実際の不動産賃借需要は日本において一貫している少子高齢化によって減少する一方であるということが、この私の疑問に対する明確な答えということになります。

というわけで、本書はそのタイトルが「2025年東京不動産大暴落」という断定的かつセンセーショナルなものであるためその主題に関しては「大ハズレ」を引いてしまっていることから、「未来」を予想することの難しさを改めて知らしめるものとなってしまってはいます(2025年は続いていますのでそれもまだ不確定でもあります)が、現在の東京の不動産の価格が需要と供給以外の特殊な事情によって高騰しているという事実は確かに存在しています。

であるならば、断定的かつセンセーショナルな部分は別としても、著者の指摘の本質部分に耳を傾ける必要はあるはずです。

 

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