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3000人待ちの本屋

2018年6月1日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先日(2018年4月23日)、NHKのプロフェッショナル仕事の流儀で紹介された「3000人待ちの本屋」こと、岩田徹さんについて書きたいと思います。

昨今、アマゾンをはじめとするネット通販の台頭によって、小売り全般のリアル店舗が苦戦を強いられている事実は日本社会の共通認識だと思います。

しかも、アマゾンはもともと「ネット書店」として始まったため、全国のリアル本屋さんはそのあおりを最も強く受けている業種でしょう。

今回取り上げられた岩田徹さんは、そんな状況の中で、札幌から電車で約一時間ほどの距離にある北海道・砂川市に売場面積40坪ほどのごく普通の町の本屋さん「いわた書店」の経営者で、そこには全国から注文が殺到しているというのです。

「3000人待ち」なのは、岩田さんが12年ほど前から続けている「一万円選書」という年齢・家族構成・読書歴など、人となりがわかるような簡単なアンケートに答えると、一万円分でその人に合ったおすすめの本を岩田さん自らが選んでくれるというサービスです。

これこそ街の本屋さんが生き残る道だ!と一瞬思いましたが、実際にその内情を見てみると、そう簡単なものでもないことに気づかされました。

まず、このサービスには特別な手数料はなく、本の代金とその送料を請求するだけだそうです。

しかも、一人一人のために選書をするためにはじっくりその人にどんな本が合うのかを吟味する時間が必要ですし、それよりなにより、膨大な読書によって、本のデーターベースを自分の頭の中に構築しなければなりません。

そのことを考えると、一日にさばききれるのは、5人分が精いっぱい。利益にすると1万円にすぎません。毎日休みなく活動してもひと月に30万円です。

これでは、いくら「3000人待ち」であっても、ビジネスとして成立するギリギリのところだと思います。

でも、岩田さんはこのギリギリのビジネスに十分満足されていました。

なぜなら、これによって、儲けは少ないけれどもこの小さな本屋を続けられるから。

そして、何より自分の仕事によって一日に5人の人生に大きな影響を与えられるから。

そう嬉しそうにおっしゃっていたのが印象的でした。

以下は岩田さんの選書を受け取ったお客さんからのお礼の手紙の一節です。

「私はずっと本を読む人であったことに気づきました。『本を読む』この楽しさが昔も今も変わらずにあるのなら、そこそこよい人生ではないかと。いつか本屋さん(岩田さん)のように『本を届ける人』になりたいと思いながら、今は素敵な本との出会いを楽しんでいこうと考えています。本当に私のもとへ素敵な本を届けてくださって感謝しています。」

自分の好きなことで、それには継続可能性があって、なおかつそれによって人に喜んでもらえ、時にはその人の人生をよい方向に変えられる仕事以上に「いい仕事」があるのでしょうか。

何か仕事の本質を教えられたような気がします。