AIにヒトは支配されるのか
2025年1月8日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
AIが発達して人間の能力を超える「シンギュラリティ」という概念と絡めて、「AIにヒトが支配される」というディストピアを心配する議論が増えてきています。
このことに関して、2024年にノーベル経済学賞を受賞した米マサチューセッツ工科大学(MIT)の経済学教授ダロン・アセモグル氏のインタビューがクーリエジャポンの記事にありました。
結論から言えば、アセモグル氏は「AIにヒトは支配されない」と言います。
該当部分を記事より以下引用します。
「AIが自律的なエージェントとなり、人間を隷属させる未来が近いうちにやってくるとは思っていません。ですが、人間の手によってAIが誤情報や偽情報の拡散などの悪事に利用されることについては非常に懸念しています。私たちのコミュニケーション・システムや政治を害するリスクもあります。」
この指摘を受けて思い出したテレビ番組があります。
それは、NHK「映像の世紀バタフライエフェクト」のナチスドイツの宣伝大臣を務めたヨーゼフ・ゲッペルスに関する回でした。
その中では、ゲッペルスが数々の演説を巧みにこなすだけでなく、当時実用化されたばかりのラジオや映画という新媒体上でフェイク、炎上商法、陰謀論を展開し、弱小政党だったナチ党を政権の座に押し上げ、ドイツ国民を完全に支配するに至った経緯を生々しく伝えていました。
今まで普通のドイツ人だった人たちが、あのナチスを崇拝する残酷非道な国民に見事に仕立て上げられてしまった歴史の流れが理解できる内容でした。
そうなのです。
「ラジオ」や「映画」という媒体が彼らを支配したのではありません。
明確な「支配」の意図(目的)をもった「人間」がそれらの媒体を使ってその意図(目的)を実現しただけなのです。
それと同じように、「AI」それ自体が自律的なエージェントとなって人間を隷属させるのではなく、そのような意図をもった人間が「AI」という媒体をそのような目的達成のために意図的に活用することによって人間を支配するのだということを(この番組を見たからこそ)アセモグル氏のこの短い指摘から理解することができました。
テクノロジーがどこまで進んだとしても怖いのは「技術」ではなく「人間」のようです。