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DXとは何か

2021年7月7日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

世界的なコロナウィルスの猛威を経て日本のデジタル化(デジタルトランスフォーメーション)が他の先進国に比べて圧倒的に遅れていることが浮き彫りになりました。

日本のデジタル音痴については、私はかれこれ二十年以上も前のアメリカ留学時からはっきりと感じていたことです。

私が極度のアナログ人間であったことはこのブログでも何度も書いていますが、アメリカに行く前はEメールすらやったことがありませんでした。

そんな状態でアメリカで生活し始めたところ、若者はおろかおじいちゃんおばあちゃんもすでに当たり前のようにEメールは使いこなしていたことに驚き、また恥ずかしい思いをしたことを思い出しました。

私は当時の日本人大学生の平均よりも圧倒的にITリテラシーは低かったのは確かですが、当時の日本人全体のデジタル音痴が彼の国と比べて圧倒的に低いことをまざまざと見せつけられ、大きな危機感を感じました。

それから二十年以上の月日が流れ、その差は縮まるどころか、むしろずっと広がってしまったということが今回露呈してしまったことになります。

そもそも、DXの略語が、なぜ「X」というその元の「デジタルトランスフォーメーション」という単語の中に全く入っていないアルファベットを使っているのか不明な状態でこの略語を強制されていることからも、日本人の多くがこのことに対して完全に後ろ向きになっていることが分かります。

*DXという言葉は、2004年に当時スウェーデンのウメオ大学教授のエリック・ストルターマンによって初めて使用され、トランスフォーメーション(変革)のtransという接頭辞には「変わる=向こう側に横切る」という意味があり、crossという単語と同等の意味を持つため、このcrossがX(クロス)と略されDXとされています。

そこで、この日本にとってのDXをしっかりと捉え直したいと思い、「DXとは何か」という一冊の本を読んでみることにしました。

本書で著者は、日本人がDXを「デジタル化」や「情報化」と同一、というか単にそれら対応する英単語であると認識して、IT化を促進すること自体をDXの意味合いだと受け止めているのならば、その本質を大きく見誤っていると指摘しています。

私自身、冒頭でEメールが使えるか使えないかをDXの問題だとするかのような書き方をしたこと自体、DXの本質を理解していていないことがバレバレとだ言われそうです。

上記のストルターマン教授は、DXは「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」ものだと言っていることから、著者は、DXを産業プロセスはもちろん、私たちの生活、社会、企業、国家などすべてに「意識改革」を起こそうという動きだ見るべきだと言います。

以下に、そのことを理解するのに資する指摘を本書より引用します。

「テレワークで仕事をするということは家庭でのオンとオフの切り替えや仕事の場所をどうするかといった生活の『やり方』も変える—つまり個人や家庭レベルのDXとも連動する。子供がいる家庭なら学校のDXも関連する。また、テレワークが進めば、当然通勤スタイルが変わる。毎日の通勤が不要になるなら、大量輸送インフラを維持するより、必要な時に必要な場所で移動サービスが注文できる『MaaS:サービスとしての移動』の方が求められるようになる―という具合で、交通の『やり方』も変わっていく。つまり都市のDXとも連動する。さらに移動だけでなく社会の様々な機能を『as a service:サービスとしての』化するというのが『XaaS:あらゆるもののサービス』化という流れ。DXのゴールは『X』の中に社会のすべての機能が入るということなのだ。」

最近、大企業に勤める方から次のようなエピソードを聞かせていただきました。

その方の勤める会社では、コロナ禍でZOOMでのリモート会議が当たり前になってきているのだが、それが一般的になるにつれて、ZOOM画面に表示される参加者の顔の並びの「序列」を気にし始めるメンバーが出現するようになってきたというのです。

この事例こそまさに、「デジタル化」はしても「意識改革」は全くできておらず、DXの本質を見誤っているケースそのものでしょう。

生産性を高めるためにZOOMというデジタル技術を使っているにもかかわらず、意識自体は、稟議書のはんこを上司のはんこに対してお辞儀するように敢えて斜めにすることを気にするのと同じような非生産性なマインドのままなのですから。

日本のように旧技術で成熟しきってしまった社会におけるDXは、「新技術導入」の問題ではなく、それを導入し活用するために「社会や制度をこう変えるという意思」の問題であるということを肝に銘じたいと思います。

 

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