「KDDIの会見は意味なかったんじゃね?」問題を考える
2022年7月6日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
2022年7月2日土曜日に発生したKDDI(au)の大規模な通信障害に関してタイトルのような奇妙な議論が起こっていることをこの記事で知りました。
「KDDIの会見は意味なかったんじゃね?」問題とは、障害の真っ最中に、障害対応の指揮を取るべき企業のトップが、障害の詳細が分からない状態で中途半端な説明に終始したことに対する業界メディアや専門性の高いジャーナリストからの批判と、「早ければ早いに越したことはない」「現時点で分かっていることを説明するのは当然」などのネットやSNSにおける一般の人たちの好意的な反応という180度異なる意見の対立が同時に起こったことを表す言葉のようです。
以下、記事の内容を一部引用します。
「実はこれまでこのような通信障害が起きた場合、まずはしっかりと事態を収束させて、原因も判明した後に会見を開く、というのが通信業界の「暗黙のルール」だった。しかし、今回は発生翌日、原因もまだ分からない中で、高橋誠社長自らが登壇して会見を催した。背景には、『天の声』がある。」
*「天の声」とは発生翌日の総務大臣のこの会見のことだとみられています。
また、この「天の声」に対するKDDIの高橋社長の次のような発言と次のような言及がありました。
「『会見も周知もお客様目線であるべきだと、官邸のほうから指示があったと総務大臣もおっしゃっていたが、そのような中で、我々のお客様対応、非常に申し訳ないなと思っています。』『今回、総務省からのご意見もあり、影響範囲も大きいのでいち早く社長の私から伝えた方がいいというお話もありました。』この露骨な『お上にやらされている感』を受けて、一部のメディアは苦言を呈している。」
私はこの記事を見てその二つの意見の対立よりも、総務大臣による「天の声」に対して大きな違和感を持ってしまいました。
参議院選挙の直前というこのタイミングで、約4000万回線ですから単純計算で三割もの国民に影響がでるような大きな障害が発生し、少なくない国民が「イライラ」を感じるであろうことが分かっているところで、「政府は早急に指導をしました」というアピールをしたいという政府の意図が見え見えです。
しかも、専門家が言うように「障害対応の指揮を取るべき企業のトップ」に会見を促すことは問題の解決を早めるどころか、逆に遅らせてしまうことになるのは明らかです。
私が総務大臣の会見に感じた違和感の根本には、2011年に起こった福島原発事故の真っ最中に当時の民主党政権がおかした過ちの記憶があったのだと思います。
政府の仕事は、問題が起きたことを責め立てることではなく、二度とこのような問題を起こさないようにすることです。
もちろん、地震が起こることを回避することができないのと同様に、今後KDDIに限らず、いずれの通信キャリアにおいてこのようなトラブルを完全に回避することは不可能です。
だとしたら、そのような障害はいつかどこかで発生することを前提に、業界の交通整理をして競業間でも不公平が生じない形で通信の融通ができるようにすることなど、仮に障害が発生してもここまでの社会問題に発展させないことを担保することこそ政府がやるべきことでしょう。
「お上」にはパフォーマンスではなく本来やるべきことをやってほしいと思います。