代表ブログ

「MAGA」 vs「WOKE」

2024年11月11日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

三回連続でアメリカの政治に関する記事を取り上げてきましたが、今回で最終回としたいと思います。

最終回で取り上げるのは今回のアメリカ大統領選の最中にも飛び交ったトランプ陣営の「MAGA」 と ハリス陣営の「WOKE」いう二つの言葉です。

「MAGA」 とは、トランプ氏がスローガンとして使用した「Make America Great Again」の頭文字を取ったもの。

そして「WOKE」とは、頭文字ではなくwake の過去分詞woke。

直訳すると「目覚め(させられ)た」という意味だが、環境問題、社会問題などに配慮する「意識高い」人を指すスラングとして使われる言葉です。

つまり、今回の大統領選挙は大まかにいうと「アメリカ中心主義(本音政治)」と「理想主義(建前政治)」のぶつかり合いだったということになります。(その結果は前回の記事で詳解しました。)

これら二つは、そもそもは共和党・民主党のそれぞれの考え方を積極的(ポジティブ)に表現する言葉だったのですが、後者の「WOKE」はだんだんと「MAGA」の側(一部民主党の中道派も)からのののしり言葉(four-letter-word)と化してきているようなのです。

こちらのいきさつについて、三年前(2021年11月23日)のパックンマックンのパックンの解説記事を見つけましたので以下要約引用します。

「アメリカでけなし文句に使われる超汚い単語はよくfour-letter word(4文字の単語)と記される。ニューズウィークのような上品な媒体に書いてはいけないので、F***KとかSH*Tのように表記され、読む人の想像に任される。僕はこれらを見ると、罪のないFORK(フォーク)とかSHOT(ショット)も巻き込まれてかわいそうだと思うけど……。最近、けなし文句としてはやっている4文字の単語といったらWOKEだ。直訳すると『目覚めた』という意味だが、環境問題、社会問題などに配慮する『意識高い』人を指すスラングとして使われる。そして不思議なことに、保守派はこれを罵るための単語にも使っている。こうした用例は他にもある。例えば、本来は褒め言葉なのに今やエリート!リベラル! WOKE! と重ねれば、右派の間では最上級の罵詈雑言となる。」

これよりも前(2018年)の時点では、この言葉はもともとの意味合いで使用されることがほとんどでした。この言葉の成り立ちについて書かれているブログを見つけましたので実際に証拠として挙げつつ以下要約引用します。

「wake(=目を覚ます)の過去分詞からきていて、『覚醒している』といった意味。通常なら stay awake になるところを stay woke と言うのは黒人独特の文法。2008年の Erykah Badu の曲の歌詞が発祥とされており、黒人コミュニティの間で『差別や抑圧に甘んずることなく、社会の不公平に対して目を見開いて警戒しつづけよう』といった意味で stay woke というフレーズが使われはじめた。丸腰の黒人が市民や警察に射殺される事件が相次いだ2014年前後から広く知られるようになり、意味も徐々に拡大。今では人種問題にとどまらず、LGBTや女性問題などさまざまな社会的不当も含め、はっきりと問題意識をもっている人を指して『誰々は woke だ』などと言うようになった。」

このように、WOKEももともとはポジティブな意味しか持ちえない言葉だったということがよく分かります。また、別の証拠としてこちらのブログも上げておきます。

その後1年がたった2019年には、もうすでに違った見方をする記事が上がり始めています。

「wokeであること自体は、もちろん素晴らしいことでしょう。しかし、一部ではそれが暴走して『絶対的な正義』を掲げ、自分と違う意見や大らかな意見、あるいは何も気にしない人々を強く非難するような人も出てきています。最近アメリカでしばしば話題となる著名人やインフルエンサーの過去の発言などを掘り出し、前後の文脈や時代背景を無視して徹底的に糾弾する『キャンセルカルチャー』もその流れでしょう。こうした状況を受け、オバマ前大統領は先日シカゴで開催されたイベントに登壇した際、こう述べました。『こんなやり方で世の中を変えることなどできない。そうやって気に入らないものに石を投げつけているだけなら、成功には程遠い』”正義の押しつけ”はリベラルを衰退させるだけ――オバマの忠告は、アメリカにだけ当てはまるものではないと感じるのは僕だけでしょうか。」

今回のアメリカ大統領選挙では、「MAGA」 と「WOKE」というたった二つの選択肢しか提供されませんでした。

この状況は、アメリカの価値の根源であったはずの「多様性:ダイバーシティ」とは真逆の状況であると言わざるを得ません。

「エリート」「リベラル」「 WOKE」などは本来当たり前ですがポジティブな言葉です。

しかし、多様性を無視し、他の考え方を完全に封じ込めようとする動きによって、本来ポジティブであるはずのこれらの言葉を最上級の罵詈雑言に変えられてしまったということになります。

この罪の重さは、ハリス陣営だけにとどまらず、アメリカのトランプ陣営も、そしてアメリカだけではなく全世界が再確認すべきことではないかと思います。

 

◆この記事をチェックした方はこれらの記事もチェックしています◆