
TOEIC 替え玉受験の本質的問題
2025年5月20日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
「大学入試」の替え玉事件は昔も今もよく聞く話ですが、「TOEIC」の替え玉事件は少なくとも私の記憶では今まで聞いたことがありませんでした。
昨日(2025年5月19日)の毎日新聞の記事に、その珍しいニュースがありましたので以下に記事を転記します。
「TOEICの試験会場に替え玉受験をするために侵入したとして、警視庁野方署は19日、中国籍で京都市左京区吉田橘町の京都大大学院2年、王立坤容疑者(27)を建造物侵入容疑で現行犯逮捕したと発表した。試験の運営法人の記録では、別の中国人留学生2人が王容疑者の顔写真を使って2024年6月と今年3月に受験したことになっており、990点満点のうちいずれも900点以上の高得点だった。警視庁は、王容疑者が替え玉受験を繰り返して報酬を得ていたとみて調べる。逮捕容疑は18日午後2時50分ごろ、TOEICの試験会場である東京都板橋区の学校に侵入したとしている。運営法人から相談を受けて張り込んでいた警察官が、会場を訪れた王容疑者に事情を聴いたところ、替え玉受験目的だったことを認めたため、逮捕した。容疑を認めているという。警視庁によると、王容疑者は自身の顔写真が載った別の中国人留学生名義の学生証を所持していた。『東京都内の駅で中国人に渡された』と説明しているという。王容疑者はマスクの下に小型マイクを隠していたといい、警視庁は別の受験者に解答を教えていた可能性もあるとみて調べている。」
う~ん、この事件なんかしっくりこないです。
というか、意味がよく分からないのです。
いや、この王容疑者がやったことことの意味は分かりますよ。お金をもらっているわけですから。
私が分からないのは、彼に替え玉を頼んだ人は何を目的として彼に頼んだのかということです。
もちろん、大学入試の替え玉事件だったら分かりますよ。
実力よりもレベルの高い大学、特に日本の大学だったら入ることだけでそれ以降の道が開けると考える人はたくさんいる(実際にそうかは別にして)わけですから。
しかし、TOEIC試験はあくまでもその人の英語力を測定するための試験です。
その人にその点数に表されるだけの英語力がついていることを証明するというだけで、何か具体的なメリットが保証されるものではありません。(例えば就職・転職に有利とかはあるかもしれませんが、あくまでもそれはその能力があることの証明なので、実際にその能力を求められたときにその力がなければ、困るのは自分であるはずです。)
つまり、このTOEIC替え玉事件の本質的な問題とは、「目的と手段の混同」にあるということです。
いや、それよりももっと大きな問題は、企業がTOEICに頼りすぎているというか、自らのリソースで自社が必要とする英語力を持っているかどうか判断する手段をTOEIC以外に持っていないということです。
極端な話、その人が英語で仕事ができるかどうかは、そのような人材を選別すべき人が直接英語で話しかけ判断すればいいことでしょう。それができないならば、少なくともその会社にはその判断ができるだけのリソースがないということにもならないでしょうか。
そんなこともあってか、日本企業の多くは実際に入社した後にその人のTOEICの点数が実際の英語力と一致していなくても困ることが起きない可能性の方が高いかもしれません。
この「目的と手段の混同」と「自社で直接判断ができないこと」という二つがこの事件の背後にある問題の本質だと思うのです。
それは日本の企業社会が社員に対して「英語力」を本当の意味で求めていないということの表れではないのかとも。
日本社会の真のグローバル化にはまだまだ時間がかかるのではないか、そんなことを実感させられる事件でありました。