Xデイ到来
2022年8月7日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
少し前に「なぜ円安が進んでいるのか」という記事を書いて、この円安ドル高の要因が「日米の金利差により金利の高いドルで資産運用をしようと円を売ってドルを買う動き」にある以上、効果的な対処は日銀が金利をあげる以外にはなく、それができない日本はこの悪い円安を傍観するしかない状況を確認しました。
この日銀が金利を挙げることができない理由は紛れもなく日本政府の莫大な国債発行残高とコロナ禍によって増加してしまった企業の借入残高にあるわけで、特に前者の日本政府の莫大な国債発行残高によるハイパーインフレのリスクについては、以前にそのリスクを重大視する藤巻健史氏の「コロナショックを生き抜く(お金編)」とそれとは真逆に「国と家庭は違う」という立場を貫く高橋洋一氏の「国民のための経済と財政の基礎知識」の二冊をご紹介して、二つの議論の対立をみました。
私は藤巻・高橋両氏の著書を読み比べた結果、圧倒的に藤巻氏に軍配を上げたわけですが、しかしこれだけの財政赤字の累積にもかかわらず日本はインフレどころかデフレが続き、今のところ藤巻氏の指摘するリスクは顕在化していないという事実もまた厳然としてあります。
そんな状況の中で、藤巻氏が新著「Xデイ到来 資産はこう守れ!」を発刊されました。
この本を非常に興味深く読み始めたのは、表紙裏に「なぜ今までハイパーインフレが起こらなかったのか」というまさに藤巻氏が自らの議論の「弱点」とも言うべきポイントへの言及があったからです。
以下にその生々しい一問一答形式の言及部分をいくつか引用します。
質問者①:
10年から15年前に藤巻先生の著書を読みそこでもハイパーインフレについての記載があり、私自身は先生の理論にとても腹落ちしているのですが、一向にハイパーインフレがやってこないのはなぜなのでしょうか?
著者:
2013年までは私はハイパーインフレとは言っておらず、財政破綻やデフォルトの可能性に言及しているのみでした。2013年3月に黒田日銀総裁が出現し、政府歳出を紙幣を刷ることによって賄うという「禁じ手中の禁じ手」という信じられない政策を開始したので、財政破綻の可能性はなくなりました。財政破綻という危機の先送りです。紙幣を刷って賄うのですから、歳出のお金が足りなくなるはずはありません。その結果、紙幣の刷りすぎでハイパーインフレのリスクが出てきたのです。危機を先送りにしたせいで爆発時の衝撃はより巨大になり、その爆発は間近だと思います。
つまり著者は、財政破綻についてはだいぶ前から指摘してきたのですが、それを黒田総裁の出現で先送りしたのが2013年で、それからは財政破綻のリスクはゼロとなった代わりにハイパーインフレのリスクが生じることとなったということです。
ですから、ハイパーインフレの議論はそれほど古くからのものではないため、そのことをもって著者を「狼爺さん」呼ばわりするのはまだ早そうです。
質問者②:
ドルは今は強いですが、アメリカもMMT的(お金を刷りまくること)なことをやっているためドルの寿命も近いという認識であっていますでしょうか?
著者:
日本やアメリカに限らずどの国も大なり小なりMMT的なことをやってきましたので、通貨過剰で法定通貨は全て弱体化すると思います。だからドルの価値もかなり下落するでしょう。(実際にインフレは進んでいる。)しかし、為替は相対論です。コイントスで表と裏が同時に出ないのと同じです。どちらの通貨がより弱くなるか?世界の基軸通貨であり、中央銀行も相対的に健全で、エネルギーとITという二大産業を抑えているアメリカの通貨が相対的に弱くなる可能性は一番低いでしょう。日本円は日銀の財務内容が劣悪ですから最弱です。ドル円はドル高にぶっ飛ぶと思います。(1ドル=500円だって十分あり得ます。)
すごいです、、、。私も著者の理論に十分腹落ちしているのですが、さすがに今の時点で1ドル=500円というような具体的な数値まで挙げてしまう著者はやはりただものではないと思います。(笑)
そして、これが本書の結論となる質問だと思うのですが、ではそのような日本の未来を見据えてどう私たちの資産を守ればいいのでしょうか?
著者:
今考えるべきは、「日本のXデイに備えて財産を守ること」であり、儲けることではないと思います。儲けるのは、Xデイを生き残り、日本が第八点を再開する数年後でいいのです。今、円だけしか持っていなければ円が石ころ化したとき、とんでもない貧困に陥ります。今はそれを回避する保険目的の資産運用を考えるべき時期だと思っています。火事になる確率が1%か2%であれば火災保険をかけないのも見識だと思います。しかし、30%や40%もあるのならかけるのは常識でしょう。私は現在の日本で火事(ハイパーインフレ)になる可能性はそれくらいあると思っています。その保険の役割を果たすのが「強い国」すなわちアメリカのドル資産です。というのも、日本人は不動産、給料、年金等金融資産以外の資産もほとんどが円建てなのです。これではあまりにもホームバイアスが高すぎると言わざるを得ません。
とは言え、それでも自分を含め日本への愛着を捨てきれないのは事実で、とてもすべてを外貨建てになど考えられませんが、「保険」という考え方であればそのバイアスを多少低くすることはできるような気がしてきました。