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中国経済の属国ニッポン

2021年9月29日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

このブログでは今まで「中国に対する日本の低評価」に関する記事を何度も書いてきました。

その中で私は、一般的に日本人は意識的にか無意識的にか、中国の経済を「低評価」するか、もしくは過度に「脅威」とするかの両極端なものが多いという事実をあげて、もう少し客観的に見るべきだという主張をしてきました。

今回ご紹介する「中国経済の属国ニッポン」という本ですが、この何とも嫌なタイトルを一見すると確実に後者だと思われそうですが、その内容はいたって冷静で客観的なものになっています。

著者の見立ては、今後中国は日本人が好むと好まざるとにかかわらず米国を抜いて世界最大の経済大国になることは間違いなく、また、米国と全く異なる原理で国を動かしている以上、米中がブロック経済的な流れを作ることは避けられないというものです。

そして、本書の目的は、そのような時代に日本がどのような立ち位置を確保するべきなのかを明らかにすることです。

それではまず、今後中国の経済がどうなっていくのかを本書から要約します。

「現在世界の経済は米国中心で回っています。それは米国が世界で最もGDPが高いからだけではなく、内需中心、すなわち外国から大量のモノを購入している経済構造を持っているからです。GDPが高いことは容易にその理由として理解できると思いますが、内需中心の経済構造も私たちの実感から理解することができます。モノを売り買いするときに売る側と買う側のどちらがその交渉の主導権を握るかということです。当然買う側です。つまり、現在の米国はその交渉力を盾に外国からモノを買うにあたって自国通貨であるドルでしか支払いはしないと言い切ることができるのです。このように現状は世界の経済のルールを米国が自分の都合の良い形で決めているのですが、そう遠くないうちに中国がこの立場を手に入れることが現実的なのです。というのも、中国のGDPが米国を抜いて世界最大となるのは2028~30年と言われていますが、先述のようにそれだけでは覇権の変更は実現しません。しばらくは中国が世界最大のGDPを誇ることになるのですが、中国は米国を抜かした後、成長鈍化が始まり、その後は米国が再び追いつくという予想となっています。しかし、抜かされても着実に経済成長を続けることになる米国のGDPが中国と再び拮抗するのは2060年ですから、2030年以降の国際社会は中国が世界経済の頂点に立ちつつ、米中が互いに緊張関係を保ったまま、中国・米国・EU三極体制が維持されるでしょう。」

ここで注意すべきことは、中国がただ単に世界最大のGDPを誇るという事実ではなく、それと併せて中国の経済構造が米国と同様の「内需中心」に変化することで「買う側」になるだろうことです。

その際、現在のように米国一強ではなく、中国が三極体制のアジア経済圏において「買う側」になったとき、アジアの一員である日本が今と同じように米国経済圏にとどまることが可能かどうかということです。

ちなみに、中国は自然な形で「内需中心」へ移行するのをただ待つのではなく、強力な意思をもって移行することを宣言しています。その指摘部分を以下に引用します。

「中国共産党は2020年、新5か年計画において、『双循環を通じて経済の拡大を図る』という方針を決定しました。双循環とは、輸出を中心とした外需(外循環)と国内消費を中心とした内需(内循環)の両方を組み合わせる方向に経済の基本構造を変えるという意味です。しかし、これは今まで中国経済をけん引してきた輸出産業に配慮した表現であり、事実上、内需主導経済へのシフトであると考えられます。」

つまり、これは中国の「交渉の主導権を握る」経済覇権を取りに行くことの宣言であり、世界の覇権を米国から奪うことができるかどうかは分からないまでも、少なくとも三極のうちの一つであるアジアにおける覇権は間違いなく中国のものにすることの意思表明だと考えられます。

その時に日本は今のままの中国観でまともな経済運営を続けられるとは到底思えません。

好き嫌いは別とした冷静で客観的な判断が必要となるのは間違いありません。