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「人生会議」はコミュニケーションにおける覚悟の問題

2019年12月2日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

皆さんは、先日からテレビ等をにぎわせている厚生労働省の「人生会議」ポスターの取り下げ騒ぎについてどのように思われていますでしょうか。

取り下げに関する厚生労働省の説明はこちらです。

この「人生会議」の普及啓発事業は、厚生労働省が吉本興業に一括委託しており、今回のポスターは都道府県や市町村に配布する予定で、公立病院に貼られる可能性も考えた上での検討だったといいます。

また、このポスターやこれと同時に作られた動画の画像や文言などは吉本興業側の提案を、厚労省の課長、室長までがチェックした上で完成したものです。

そもそも、「人の死」という非常にデリケートで、その受け取り方が非常に多様とならざるを得ないテーマについて強いメッセージを発信すれば、すべての人が納得できるようなコミュニケーションにはなりえないということは容易に想像できます。

なぜなら、今回の「人生会議」の啓発事業には、「亡くなる人」と「残される人」のうち、「亡くなる人」の視点にフォーカスしようとするものあって、もともとそこには「残される人」との間に齟齬があるということ自体を世の中に対して訴える意味もあったはずだからです。

この問題は、コミュニケーションの本質についての理解を私たちに突き付けているように思います。

それは、コミュニケーションの「効果の強さ」と「対象の範囲」はトレードオフの関係にあるということです。

今回、厚労省は、明らかに対象の範囲を「亡くなる(ことを意識した)人」という極端に狭い範囲に絞ることで、「効果の強さ」を最大化しようとしました。

このようなデリケートなテーマのPRに吉本興業というパートナーを選んだということがそのことを表していると思います。

しかし、そのような「対象の範囲」を絞ったコミュニケーションには、その範囲外の人々には、攻撃的なコミュニケーションとなるリスクがあるのは当然です。

だからこそ、厚労省はこのテーマで啓蒙活動をしようと決断した段階で、「残される人」の気持ちを背負う覚悟をしなければなりませんでした。

そして、その覚悟を、「残される人」にも、その苦しみを乗り越え、「亡くなる人」の後悔を最小限にすることの重要性を理解してもらう努力につなげなければなりませんでした。

今回の厚労省の企画が人間の「命の選択」という重大なテーマに対する投げかけを行おうとするものであった以上、結果的に「残される人」からの指摘によって一日足らずで取り下げてしまったことで、その重大性に対する覚悟が厚労省になかったことを明らかにしてしまったように思います。

コミュニケーションの難しさを痛感しました。

 

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