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小学校英語の教科書

2019年4月1日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先日(2019年3月27日)の時事通信社のウェブに「2020年度から初めて小学校で使われることになる5、6年の英語教科書は、7社が申請し検定を受けた」との記事がありました。

「教科」としての小学校英語で使用される教科書の全体像が具体的にイメージできる形で報道されたのは初めてでしたので、非常に興味深く記事を読みました。

記事中に書かれていた具体的なイメージは以下のようなものでした。

「基礎的な英単語や日常会話などを、豊富なイラストを交えて教えるほか、「聞く」「話す」を重視し、能動的な授業を進めるための工夫がなされている。新学習指導要領は、小学校卒業までに600~700の英単語を学ぶとしている。大半の教科書は、自己紹介などで英語を聞き、話す体験によって興味を引く導入部を置き、アルファベットの読み方と書き方、曜日や月、動植物を示す名詞、「走る」といった動詞、形容詞を覚えていく構成とした。また、「私は~が好きです(できます)」などの基礎的な構文、「what」「who」を使った疑問形の作り方を紹介。料理の注文や道案内といった身近な場面を多用し、児童がたくさん話す機会を設けた。音声を聞いて、内容と合うイラストを選ぶなどリスニングの項目も多い。」

現在中学校三年間で学ぶ単語の数は、中学1年生で500語、中学2年生で400語、中学3年生で300語程度の合計1200語です。

2020年以降は、その半分以上の数を小学5~6年の二年間で学習し、中学校では1600~1800語程度を学習する計画のようですので、最大で合計2500語を中学三年までに学ぶことになります。

まだ思考能力が固まっていない小学生に今まで中学生に対して記憶させていたものの半分以上を強制させるためには、まずもって圧倒的に長い時間が必要であるとともに、教える側の技術が相当高いレベルで求められるはずです。

にもかかわらず、中学校であっても今までの分量でさえ習熟させることに成功しているとはいえないのに、その1.5倍もの量を覚えさせることをどう達成するというのでしょうか。

しかも、現状の教育行政にかかる予算でも必要十分とは言えないというのにです。

あまりにも大きな目標を、その手当をせずに掲げるというのは、無謀以外の何物でもないでしょう。

しかも、従来の学校英語教育が成功していない最大の理由は、基本的な教育方針が誤っているからでも、分量が足りないからでもありません。

それは、ほとんどの日本人がそれを身に着けた後に実際にそれを使用する環境を得ることがなかったからです。

日本の英語教育を受けて最終的に英語習得に成功した人というのは、その基礎を学校教育で身に付けた後、何らかの事情で英語を使わなければならない状況におかれた人です。

日本の社会状況が人口の半分以上の人が日常的に英語を使用しなければならない状況なのであれば、現状の英語教育で十分英語を使える人材は育成可能なのです。

フィリピンの状況がそれを明確に物語っています。

ただし、それは日本がフィリピンのように国家の運営を母国語で行うことをあきらめる決断をすることと引き換えであることを覚悟しなければなりません。

なぜ日本はそのことに気づかないのか。

逆に言えば、日本の社会が日常的に英語を使用しなければならない状況にならない限り、このように無謀な目標を掲げてその教育を早め、深めようとも結果は目に見えていることは断言できます。