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武器になる哲学

2021年11月24日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

以前に「ニュータイプの時代」をご紹介して、著者である山口周氏の著作にはハズレがないと書きました。

ということで、彼の過去の著作で見逃しているものはないか探してみましたら「武器になる哲学」という一冊を見つけ読んでみましたのでご紹介します。

本書の魅力は、元コンサルタントという経歴を持つ著者が、哲学に関しては専門家ではないという立場を明確にしながら本書を書いているところにあります。

というのも、最近の私のブログの中心テーマとしてコロナウィルス関連の書籍をご紹介することが多いのですが、コロナ禍の日本における最大の問題が「専門家」という存在の扱い方であり、彼らからアドバイスを受け取る側がよほど賢くならなければ、かえって混乱を引き起こしてしまうということを学びました。

そして、この問題を解決する方法として、「専門家」と「素人(政策実行者を含む)」の考え方をバランスする姿勢をもつことを強く印象付けられたからです。

「哲学」の門外漢ではありながらも、学際的に問題を捉えることが当たり前とする著者がどのようにこの「哲学」という分野にアプローチするのかものすごく興味深いと思いました。

まずは、著者が本書を書くにあたってのモチベーションとなったシカゴ大学のロバートハッチンス教授の次の言葉が印象的でした。

「無教養な専門家こそ、我々の文明にとっての最大の脅威。専門家というものは、専門的能力があるからと言って無教養であったり、諸々の事柄に無知であったりしていいのだろうか。」

これはまさしく、上記の日本におけるコロナ禍の混乱の元凶である「専門家」のふるまいを戒めたもので、このことを前提にしない「専門家」の暴走は、「なんとかに刃物」という諺の真意にも通ずるところがあるように思います。

本書ではまず、一般的に私たちは「哲学」という学問に対してある種のアレルギー反応すなわち近寄り難さを感じてしまう理由について以下のように説明されています。

「哲学には『世界はどのように成り立っているのか(What)』と『私たちはどのように生きるべきなのか(How)』という問いの種類、それからその二つの問いの種類へ到達するまでの『プロセス(過程)』と『アウトプット(答え)』という学びの種類という二つの軸に沿って整理されます。その理解からすると、古代ギリシアの哲学者たちが考えた(What)に対する(答え)などは現代人である私たちは、それらのほぼすべてが間違っているか、それとも当たり前すぎて陳腐すぎることを知ってしまっています。ですから、哲学を学ぶことの意味を見出すことができないのです。」

その上で、私たちが哲学を学ぶ意味を次のように分かりやすく説明してくれています。

「しかしながら、こうも言えます。古代ギリシアのアナクシマンドロスという哲学者は、当時支配的だった『大地は水によって支えられている』という定説に疑問を持ちます。その理由は『もし大地が水に支えられているのであれば、その水はまた何かによって支えられている必要があるわけで、何かを支える何かを想定すれば、無限に続くことになるが、無限にあるものなとあり得ない、そうなると最終的には大地(地球)は何物に支えられていない、つまり宙に浮いていると考えるしかない』と推論したわけです。この推論(What)も現代の私たちにとっては陳腐以外の何物でもない、すなわち『アウトプット(答え)』からの学びは何もないことになります。しかし、当時支配的だった『大地は水によって支えられている』という定説を鵜吞みにしない彼の知的態度や思考のプロセスは現在の私たちにとっても大いに刺激になります。」

本書は、哲学の素人である著者が、哲学の歴史の中から自身にとって仕事の武器になるかどうか、すなわち「使えるか使えないか」という極めて主観的な視点から、歴史上の哲学者を50人選び出し、彼らの思考のプロセスを追体験することで、哲学を学ぶ意味合いを明らかにしようとするものです。

私にとっては、またもや、決して期待を裏切らない著者の信頼を高める本となりました。

 

 

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