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鋼のメンタル

2020年11月15日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

今回は、以前にもこのブログで書きました「海賊と呼ばれた男」の原作者である百田尚樹氏の「鋼のメンタル」をご紹介します。

私は著者について、世の中の多くの人を感動させる大作家にして、政治や社会問題に対して非常に辛辣なメッセージを公表し「炎上」を厭わない右寄りな人という二つの顔が奇妙に同居する不思議な人だと思ってきました。

もちろん本書は、彼の二つの顔のうちの後者の顔によって書かれたものです。(笑)

著者が本書で主張する「鋼のメンタルを手にする方法」は二つに大別されます。

一つは「最悪の事態の想定」、そしてもう一つが「苦悩の相対視」です。

まず、「最悪の事態の想定」からその該当部分を引用しながら見ていきます。

「たとえ上司が相手でも、本当に言いたいことは言うべきです。それで上司の不況を買っても、運が悪くて左遷させられるか、地方に飛ばされるくらいです。『それが耐えられないのだ!』とおっしゃる方がいるかもしれません。そういう人に私は言いたい。それならば、あなたは一生、上司の犬になっていきたらいい、と。一回しかない人生、本当にそれでいいのですかと。言いたいことを言って想定できる最悪の事態は何でしょう。せいぜい『クビ』くらいでしょう。私に言わせれば会社をクビなることすら人生最悪ではありません。命まで取られるわけではないのです。日本はつい70年前まで仕事どころか明日の命も分からない状況だったんです。」

つまり、著者は悩みの原因である「リスクテイク」のリスクの最悪のレベルを把握し、それが自分自身が受け入れられる範囲に収まっているかどうかをきちんと把握することで、冷静な判断ができるはずだと言っています。

人間が苦悩だと感じることの多くは、その苦悩それ自体よりもその実態が不明確であることからくる「不安」が原因であるという苦悩の「カラクリ」を知ることで、その苦悩が自分の許容範囲に収まっているならそれは苦悩ではないと判断できるようになるわけです。

そしてもう一つの「苦悩の相対視」についても該当部分を引用します。

「20世紀のあった二つの戦争もそうですが、近代以前には戦争だけでなく飢餓、疫病、絶対的な身分制度に奴隷制など、いや21世紀の現代においても明日の命さえ保障されない世界で生きている人たちが大勢います。そうしたことを思えばこの日本に生きていることはどれだけ幸福なことでしょう。果たして今、自分が悩んでいることは本当に『悩み』に値するものなのだろうかと自問すると、恥ずかしくなってくることさえあります。」

私はこの著者の指摘を、人間の心は相対的なものであると言っているのだと捉えました。

つまり、この世の中には自分と比較にならないくらいの苦悩の中に生きている人が存在しているということを知ることによって、自分が悩んでいることは本当に『悩み』に値するものかどうかを相対的に判断できるようになるわけです。

この二つの方法を改めて見返してみると、著者の言う「鋼のメンタル」とは実は精神力というよりは分析力のことを指しているのではないかと思えてきました。

著者の言葉を借りてまとめるならば、「鋼のメンタル」とは「想像力と知識そして思索する力」だということになります。

 

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