
アブダクション英語学習法 #366
2026年6月3日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介

【書籍名】 アブダクション英語学習法
【著者】 今井 むつみ
【出版社】 日経BP
【価格】 ¥1,800 +税
【購入】 こちら
アブダクション?
確か「abduction」とは、「誘拐する」という他動詞「abduct」の名詞形で「誘拐」だったような気がするけど、「誘拐英語学習法」って何だろう?
これが、本書を初めて見たときの私の頭の中の思考でした。(笑)
読み始める前に、辞書で改めて「abduction」を調べてみましたら、(1)誘拐(2)拉致(3)哲学・論理学の専門用語で「仮説推論」とありました。
次にこの「仮説推論」とは何かを調べてみると、アメリカの哲学者チャールズ・パースによって「演繹法」と「帰納法」という思考法に対する第三の論理思考方法として、結論となる事象に規則を適用して前提を推論する方法だと言い、例としては「雨が降れば草が濡れる」「草が濡れている」の2つが真の場合、「雨が降ったのだろう」と推論することだそうです。
だから何?と突っ込みたくなってしまいますが、要は 「結果(事実)」を説明するための「原因(仮説)」を直感や連想から(飛躍的に)推測する方法で、直感や連想に頼るしかないからこそ、AIにはできない人間だからこそ可能となるもので、新しいアイデアやイノベーションを生み出すプロセスにおいて不可欠な思考法とされています(「仮説」を飛躍的に「さらってくる形の推論」という意味で、abductive reasoningと言うこともあるそうです)。
というのも、AIはビッグデータからパターンを抽出して予測をする「帰納法推論」で答えを出しますので「仮説」を作りません。つまり、アブダクションこそが「人間が自分の頭で物を考えるスキル」そのものと言えるのです。
もう少し、その本質を理解できるような例を本書から引用します。
「コンデンスミルクのことを『イチゴのしょうゆ』と呼んだ子供がいるそうです。その子供はおやつのイチゴにコンデンスミルクをかけたいけど、その名前が出てこない。そこで、コンデンスミルクもしょうゆもどちらも『食べ物にかけて、おいしくする液体』だという構造に気づいて『イチゴのしょうゆ』と表現したのです。これがまさに『アブダクション推論』です。」
たしかに、イチゴとしょうゆというそれだけを取れば全く関連性ないものの間に、直感によって(飛躍して)「原因(仮説)」を推測し、誰もが「ああ、分かったコンデンスミルクのことね!」と言わしめるイノベーションが起こっています。
このように、子供はアブダクション推論を繰り返し、間違いを修正しながら言葉を覚えていく、言い換えれば仮説を立てて間違うことで学びを深めていくのです。
前置きが非常に長くなってしまいましたが、著者は「英語独習法#290」でご紹介済みの言語学者 今井むつみ先生で、英語学習を通じてアブダクション推論を実践することを本書の目的として掲げられています。
認知科学者がその知見を駆使して書いた(「新しい学習法」としての紹介だけでなく、その方法が良い理由と仕組の説明も含めた)という非常に合理的な「英語学習書兼アブダクション実践書」になっています。









