
ニューズウィーク 2023年11/7号 #347
2025年3月20日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 ニューズウィーク 2023年11/7号
【出版社】 CCCメディアハウス
【価格】 ¥464+ 税
【購入】 こちら
先日(2025年3月18日)、アベマプライム(ニュースな話題に関する討論番組)の議論に参加させていただく機会を得ました。
その議論のテーマは事前に知らされており、「日本人が英語が苦手な理由」「LVで短期間で英語が身につく理由」そして「AI時代に英語学習の意味があるのか」の三つでした。
当然ですが、前二つについては私の本職である以上、準備は全く必要ないと思っていましたが、最後の「AI時代に英語学習の意味があるのか」についてはちょっと心配な部分がありました。
というのも、私の中でのその答えも比較的はっきりしていて「意義はある(英語学習は存在し続ける)」というものでしたが、それを人様と議論して納得させられるだけの「論理」なり「証拠」なりが他のテーマと比べて弱いなと気づいたからです。
そこで、「AI×英語」の現状はどのようなものなのかを知ることができる雑誌はないかと思って探したところ、2023年11月発行と少し古いものでしたがこちらがヒットしましたので読んでみることにしました。
まずは基本的なこととして、いままでポンコツで使い物にならないと思われていた「機械翻訳」のイメージが万能の神のように変わった分水嶺はどこだったのかについて以下のような指摘がありました。
「AIのディープラーニング(深層学習)を活用したニューラルネットワーク翻訳の登場によって、誤訳だらけだった機械翻訳が『使える』水準に届き始めたのは2016年頃のこと。それからわずか7年(今となっては9年)、外国語学習者をサポートするテクノロジーは学習者をサポートするテクノロジーは著しい進化を遂げた。極めつけは2022年11月に登場したChatGPTに代表される対話型の生成AIだ。膨大なテキストデータに基づき、前後の表現を予測して文を生成する点では従来の機械翻訳と同じ仕組みだが、できることはけた違い。翻訳はもちろん、ようやくや書き換え、添削・校正、オリジナルの文案作成まで語学関連だけを切り取っても守備範囲は極めて多岐にわたり、もはや『ただ訳すだけ』の機械翻訳が文法に思えてしまうほどだ。」
そして、その具体的な威力についても次のような指摘がありました。
「ネイティブに近い性格で且つ流暢な表現を誰でも簡単に生み出せるようになったことで多くの日本人を苦しめてきた英語の壁が崩れ去り、生産性を爆発的に高められるようになった。実際、AIツールを賢く利用すれば、言葉の壁はほぼないに等しい。AIの英語運用能力はすでに大半の非ネイティブ話者をはるかに上回っており、『読む・書く・聞く・話す』のあらゆる場面で人間の右腕となって働いてくれる。」
ということは、「英語圏の人とコミュニケーションをとる」という機能を実現するという目的を達成することには、もはやAIは何ひとつ能力不足な点は存在しないということが明らかになったということです。
つまり、AIの翻訳能力が人間の力には及ばないことを理由としてその不十分性をあげつらう意味は全くないとということになります。
ですから、人間が「努力をして英語力を身に着ける」ことで生じるコストを、「努力をして英語力を身に着ける」ことで得られるメリットが上回るのかどうなのかというのが、唯一意味のある問題提起とその議論ということです。
そのメリットがどのようなもので、どういう場合にコストを上回るのかということについてはすでに「AI時代における英語学習の存在意義」の記事において明らかにしましたのでそちらをご参照ください。
なお、そのメリットが上回って「努力をして英語力を身に着ける」決断をした人の実際の英語学習のコストの削減にもAIが貢献するという事例が豊富に報告されていて、AIの存在を否定することはいずれにしてもありえないことがよく分かる内容になっていました。