ラフカディオ・ハーンの英語教育 #249
2021年4月2日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 ラフカディオ・ハーンの英語教育
【著者】 平川祐弘
【出版社】 弦書房
【価格】 ¥3,200 + 税
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ラフカディオ・ハーン(日本名小泉八雲)
1850年、アイルランド人の父とギリシャ人の母の間に生まれる。20代前半からジャーナリストとして活躍し、米国出版社の通信員として来日。その後英語教師として教鞭を執るようになる。翌年日本人の小泉セツと結婚し、松江、熊本、神戸、東京と居を移しながら日本の英語教育の最先端で尽力しつつ、日本各地の怪談を英語で世界に向けて紹介した「怪談」をはじめ、欧米に日本文化を紹介する著書を数多く遺した。
本書は、彼が明治24年から3年間熊本第五高等中学校で教えた英語の授業の内容を当時の教え子のノートから復元する形で講義ノートとして再構成し、彼の英語教師としての優秀さを確認するものとなっています。
その優秀さは本書における以下のような解説文からも理解することができます。
「ハーンの英語授業は、前任者の方法とは異なり、英語そのものの用法や語源に焦点を当て、授業のスタンスにおいては軸足を西洋の側にではなく、学ぶ日本人学生の側においている。学生たちの日常生活から遊離した抽象的で分かり難いテキストの作品世界を文字の読みを通して追っかけるのではなく、ネイティブスピーカーではない日本人学生が外国語である英語を身に着けるには何が必要か、という根本的な視点に立っている。」
「基本的に彼の講義は『何か(what)』『何故か(why)』と問いかける場面が多い。ここには彼の対話による授業の進め方のストラテジーが反映されている。言語には分野語を形成するルール(規則性)が存在するが社会的な約束事としての語用論的なものもある。ハーンはこの両者に目配りしながら身近で具体的な事例の提示とその解説を忘れない。これはハーンの優れた英語教師としての見識を証明していると言えよう。」
私も実際の講義ノートの内容を見て非常に感銘を受けました。
というのも、色の濃淡、音の高低やサイズ(長さ)の長短に関する「コロケーション」など、英語を外国人として学ぶ上で最も困難であろう部分を非常に意識的にあの手この手を駆使しながら分かりやすく教えてくれているのです。
しかもそれをネイティブスピーカーの一方的な押し付けではなく、日本語と英語、西洋と東洋の文化の違いなどの深い理解を基に実に丁寧に。
これは、アイルランド人とギリシャ人の両親を持ち、ジャーナリストとして世界を旅し、その後日本という別世界に骨をうずめる決断をした彼だからこそできた講義ではないかと思います。
こんな授業、私も受けてみたかった。