共通語の世界史 #238
2020年4月19日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 共通語の世界史
【著者】 クロード・アジェージュ
【出版社】 白水社
【価格】 ¥4,600 + 税
【購入】 こちら
本書は、西洋人である著者が、西洋人といってもフランスの植民地であったチュニジア出身のユダヤ系という言語的にも民族的にも複雑な事情を抱えたアイデンティティから地政学的視点からまとめたヨーロッパ諸言語に関する歴史書です。
そして、歴史書は同時に未来を指し示す役割も果たします。
本書のテーマを短くまとめて表現しようとすれば、本書内の以下の言葉がぴたりとくると思います。
「ヨーロッパの諸言語の多様性そのものが統一性への希求を育てることが明らかになるだろう。この二つのものが折り合うことは、幻想なのだろうか、それとも耳に心地よい言葉の戯れに過ぎないのだろうか。私たちははっきりと『否』ということができる。なぜなら、多様性の維持こそが、統一性を生み出す酵母なのだから。それでもやはり、そのことをはっきりと感じるためには、薄い暗闇を通じて光の沃野に向かう細い道をたどることに同意しなければならないだろう。」
アメリカのトランプ大統領誕生、イギリスのEU離脱の成立、そして新型コロナウィルスの猛威という世界的な混乱の流れの中で本書を読みましたが、「薄い暗闇を通じて光の沃野に向かう細い道をたどることに同意しなければならないだろう。」という後半の部分の印象が非常に強く感じられ、複雑な気持ちにならざるを得ませんでした。