再びなんで英語やるの? #45
2014年5月13日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 再びなんで英語やるの?
【著者】 中津 燎子
【出版社】 文春文庫
【価格】 ¥360 + 税
【購入】 こちら
前回ご紹介した「なんで英語やるの?」の続編です。
1978年の出版で前作が1974年に出版されておりますので、大宅壮一ノンフィクション賞受賞4年後の作となります。
著者も作中で述べられていますが、その4年間は前作の影響力があまりに大きく、また現在とはかなり事情も違い、賛否両論の吹き荒れたようです。応援の声とあわせて、「素人のくせにに英語教育に口を出すな」的な反論も多く著者のもとへ届けられたと言います。
そんな中で、この書籍紹介コーナーでもご紹介しました國弘正雄氏から著者の取り組みに対する意見があったそうです。
「学校の先生たちが取り組めないような訓練方式では、あなたの英語教育についての主張も具体性がなくなりますね。先生たちが生かされないようでは駄目です。」
この言葉をきっかけに著者は大人、特に英語教師を対象とする発音訓練研究会を本格的に展開するようになります。
本書はその活動の奮闘記です。
#44でも書きましたが、私は日本人の英語において発音をあまり重視しない立場にあります。ただ、本書を読んで、著者が國弘正雄氏の言葉をきっかけに学校英語教師に対して本格的な発音訓練を施す様子に触れ、もしかすると日本人は発音を軽視しすぎなのではないかという気持ちが私の中でも持ち上がったのは確かです。
昨今では学校教育において発音記号について一切触れない、もしくは触れても記憶にとどめることをさせないという状況のようです。ですから、多くの中学生が平気でカタカナを使います。
私たち世代が中学で英語を習い始めたときには、少なくとも、形だけは「発音記号」には触れました。ただし、文字通り形だけです。ですから、日本語にはない母音を確実に捕捉するまでには達っすることはありませんでした。
私個人としては、単語帳にカタカナ表記をするのにどうしても違和感があったものですから、何とか発音記号を活用しようと自分なりのルールを作りました。それは、数ある母音をむりやり日本語の少ない母音に合わせてしまうということです。つまり、日本語にはないӘ,ӕ,a もすべて同じ「ア」の発音であると覚えこんでしまうというルールです。
これで、カタカナ表記からは解放されるのですが、細かい発音の違いは無視です。ですから、発音の問題は文脈でカバーすればよいという文脈依存理論が別に必要となるのです。つまり、学校教育の前提がそうであればそれを所与とした上での次善の策をとるということに過ぎません。
しかし、本書を読んで、もし日本人が英語を習い始める段階で的確な発音の指導を学校教育において受けられる体制が作られれば、私の主張も変わったかもしれないと思いました。ただ、そのための道のりは発音の性質がまるっきり英語と異なる日本人には非常に険しいということがリアルに感じられる内容でありました。
また、それが大きな動きにつながらず、結果的に現在の学校教育の発音への姿勢が上記のとおりであるということもまた否定できない事実です。
文責:代表 秋山昌広