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危うし!小学校英語 #19
2014年5月10日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 危うし!小学校英語
【著者】 鳥飼玖美子
【出版社】 文藝春秋
【価格】 ¥767(税込み)
【購入】 こちら
2011年度から、小学校での外国語(英語)活動が必修になったことは非常に大きな話題となりましたのでご記憶の方も多いと思います。
具体的には、
「現行では週1回の授業を、3、4年で週1~2回、5、6年では週3回に増やす。世界で活躍する人材を育成するため、早い時期から、基礎的な英語力を身に着けさせるのが目的。2020年度をめどに全面実施をめざす。」
というものです。
2011年の必修化議論の時から、一貫してこの制度変更に反対してきました。しかも、かなり強く、「怒り」さえ感じながらの反対です。
なぜなら、この議論は日本人が抱える英語の問題の本質を全くとらえていない議論を前提に進められていたからです。
私は、常々「日本人の英語教育は無駄であるけど無駄でない。」という言葉でその本質をとらえてきました。
つまり、文法、語彙の詰め込み方式を中学、高校と6年間みっちりやる日本の英語教育は、その知識をほとんどコミュニケーションにつなげられないという事実をもって「無駄である」が、一旦、コミュニケーションにつなげるモチベーションや機会を得た人間にとってはものすごく「意味のある」ものです。
もう少し、具体的に言います。
日本の英語教育が6年以上かけてやることは英語知識という「道具集め」の徹底のみです。ですから、道具は集めただけでは、使い物になりません。そのため、ほとんどの日本人がその集めた道具に日の目を見させることができずに終わってしまいます。
しかし、そんな日本の教育を受けた人は、目には見えないけれども、文法と語彙のインプットという基礎がかなりしっかりできているのです。
ですから、コミュニケーションにつなげるモチベーションや機会を得た時には、爆発的な上達を可能にする素地を持っているということなのです。
(これらを与える場所がまさにランゲッジ・ヴィレッジと考えています。)
これが、「10年間やってもできなかった英会話がLVの2週間でできてしまう」ランゲッジ・ヴィレッジの魔法のからくりです。
ですから、英語が使える日本人を養成するためには、中学、高校、大学とやってもできないからまだまだインプットが足りない、だから上に伸ばせないのなら、下に伸ばして小学校で時間を確保するという考えは当たらないのです。
インプットは中学ぐらいまでのものを徹底し、その後の教育は、その道具をコミュニケーションにつなげる仕組みに変えてバランスをとってあげることが必要なのです。
このことがすべてであり、これを無視して、小学生に英語学習を強いることは百害あって一利なしと私はずっと主張してきました。
以前に紹介した「英語公用語化は何が問題か」の著者、鳥飼先生のもう一冊の本「危うし!小学校英語」にはこの問題に対してわかりやすく、そして現実に即した形で警鐘を鳴らしています。
前回も書きましたが、私のような若輩が言っては叱られてしまいますが、鳥飼先生は本当にしっかりとした考えを持たれているなと感心します。
この本の中の鳥飼先生の主張で最も「なるほどな」と思ったこと、それはこの小学校英語導入に踏み切らせるべく圧力をかけている勢力が二つあり、その一つが日本の産業界、そしてもう一つがなんと「親」だということです。
この意見に触れて、思い出したことがあります。
ランゲッジ・ヴィレッジでは、以前、地元の小学生を対象に「キッズ向け講座」を提供していました。ここでは、英語を学習ととらえられてしまう危険のあることはすべて排除しました。
外国人講師の側からは宿題はもちろん、講座の中でも何々を覚えなさいなどということは一切言いません。とにかく、外国人講師と一緒に遊び、そして夕飯を一緒に食べて、「国際感覚」を身に着けることだけに主眼を置いていました。
詳しくは「ランゲッジ・ヴィレッジの歴史」の記事をご覧ください。
外国人講師と一緒に週に一回触れ合うだけでなく食事を共にするという環境は日本国内においてはかけがえのないものであり、かなり意義のあることをしていたという自負がありました。
しかし、どうしても一部の親御様から、「どこどこの英語スクールでは毎回宿題を出して単語を覚えさせているのに、LVでは~」とか「LVではただ遊んでいるだけ~」というようなご意見が絶えませんでした。
もちろん、先ほどの本質論でご納得いただけるよう努力しましたが、その努力もむなしく最終的には「キッズ向け講座」をクローズするという結論に達してしまいました。
日本人にとっての英語の本質を社会に伝えることも私たちの使命の一つだと思ってやっていましたが、いかにせん鳥飼先生のおっしゃるようにこの圧力は半端ではありませんでした(笑)
しかしながら、鳥飼先生も継続的にこの問題に取り組まれていることに勇気づけられ、私たちも諦めずに頑張っていこうと心を新たにした次第です。
文責:代表 秋山昌広