名文で学ぶ英語の読み方 #324
2024年9月25日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 名文で学ぶ英語の読み方
【著者】 北村 一真
【出版社】 SB新書
【価格】 ¥990+税
【購入】 こちら
著者の北村一真氏は、英文を「読む」ということの意味とその方法論、そして読むということから「聴く」への橋渡しの方法について、本ブログでご紹介した#251「英語の読み方」#286「英文解体新書」#315「英語の読み方 リスニング編」の三冊で明らかにされてきた方です。
本書は、その著者がそのようにして「読む」「聴く」こと、すなわち「英文解釈」ができるようになった後、その英語を味わう「英文鑑賞」というより高みにまで英語学習者を導くことを試みられた一冊です。
「英文解釈」と「英文鑑賞」とはいったい何が違うのか?
本書は、これを非常に具体的にそして体感的に理解させてくれる作りになっています。
例えば、本書では、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の「雪女」の次のような文章に対してクイズ形式でこちらの好奇心をくすぐり、その後で的確な文法説明をしつつもその目的と効果を分かりやすく提示してくれています。
In a village of Musashi Province, there lived two wood cutters: Mosaku and Minokichi.
クイズ:この文のthere lived….という言い方にはどういう効果があるのか?(→正解は〇〇ページ)
正解:新しい登場人物などを物語に自然に導入する効果がある。
「there構文は、be動詞以外にも、存在、出現などを表す自動詞とともによく用いられます。この構文は、シンプルに存在を表現するだけでなく、文脈に新しい情報を導入する役割を担うこともあります。コミュニケーションでは相手がすでに知っている事柄から先に話して、新しい情報はできるだけ後に置くことが基本です。しかし、主語を文頭近くで表現せざるを得ないという英語のルール上、これまでに話題に出ていなかった人や物を文脈に導入しようとすると、普通の文の形ではどうしても先頭近くに新しい情報が来てしまうことがあります。そうした場合に、there構文を使用することで、新しい情報を文の後半に置くことができるというわけです。この構文は、物語の導入部分などに適しており、実際に小泉八雲の『怪談』に収録されている作品の多くはthere構文から始まっています。」
どうでしょうか?
実際の文学作品の文章を利用していることもあって通常の生活ではあまり出てこないこのような高度な表現も、その目的と効果について着目しながら解説されると、ス~と頭に入ってくるというか体感的に理解できるような気がしませんか?
その証拠に、この解説には一言も「倒置」とは言っていませんが、私は以前の「倒置」の学習を思い出し、自然体でこのthere構文と一致させることができました。
そして、「ああ、これが英文を味わうことか」と「英文鑑賞」の領域に少しだけ足を踏み入れたような感覚を得ました。