
子どもに英語を教えるな #46
2014年5月15日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 子どもに英語を教えるな
【著者】 市川 力
【出版社】 中央公論新社
【価格】 ¥760 + 税
【購入】 こちら
本書において著者は、自らが長年アメリカにおいて日本人駐在員の子弟に対して「塾」の先生として携わった経験から「帰国子女」の実態をかなり詳細に具体的なケースをあげて紹介しています。
その結果、日本人が一般的に抱く帰国子女=英語も日本語も「両方できる」いわゆる「完璧なバイリンガル」というイメージを改めさせられる内容になっています。
もちろん、その「両方ができる」完全なバイリンガルになることに成功した帰国子女の例もないわけではないことを明らかにしたうえで、「両方できる」ことには程度の差があり、その程度の差こそが大きなリスクを内包していることを衝撃的に明らかにしています。
著者は「両方ができる」完全なバイリンガルになることに成功するためには非常に厳しい「条件」があるといいます。それは、英語を学ぶにあたって、
・適切な動機づけがあること
・適切な学習環境があること
・適切な方法論にのっとること
の三つがすべてそろうことです。そして、この三つの条件がすべてがそろわない状態でバイリンガルを目指すことは大変なリスクを伴うことであると警告します。
そのリスクとは、英語と日本語も日常会話言語レベルでは理解できるが、抽象的、論理的レベルでは両方とも不完全な「セミリンガル」状態、すなわち日本語でも英語でも深い思考を行うことができないという取り返しのつかない思考状態を作り出してしまうことです。
本書の優れた点は、単なる理論の紹介にとどまらず、自らの経験に即して実感できる実際のケースを多数あげることでこのリスクを具体的に明示していることです。
数は少なくても、実際に「両方ができる」完全なバイリンガル化に成功した例があるということは、子供がまだ小さいうちに日本語、英語の両方を同時に学習させることは、完全なバイリンガルに育つ素地を作るためのスタートのタイミングとしては「理想的」だと言えるのかもしれません。
しかし、その子が20歳過ぎになるまで適切な「動機」「環境」「方法」の三つの条件がそろいつつ「努力をし続けること」が条件である以上、そのことに挑戦することは針の穴に天井から糸を通すほどのわずかな可能性にわが子の人生を賭けることと同意義だということです。
まずは、全ての親が冷静に、その三つの条件をそろえることの現実性を判断することと、その結果得られる「完全なバイリンガルに育つ」ことの価値を評価することを併せて行わなければなりません。
その評価結果として、著者の一般向けの結論は「子どもに英語を教えるな」ということのようです。私も全く同感です。
文責:代表 秋山昌広