カムカムエヴリバディ(平川唯一と「ラジオ英語会話」の時代)#262
2021年12月10日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 カムカムエヴリバディ 平川唯一と「ラジオ英語会話」の時代
【著者】 平川 冽
【出版社】 NHK出版
【価格】 ¥1,300 + 税
【購入】 こちら
本書は、代表ブログの記事「カムカムエヴリバディ」でご紹介したラジオ英語講座「英語会話」の講師であった平川唯一氏の軌跡を実の息子である平川冽さんがお書きになったものです。
当時どんな放送をしていたのか、どのように人気となったのか。そして講師の平川唯一氏はどんな人物だったのかについて詳細に書かれています。
日本人の英語との付き合いは、「なかなか手に入らない理想の恋人を常に最大限の興味をもって追いかけ続ける様なもの」だと言われますが、彼は少なくとも日本人にとって英語を「理想の恋人」にし、いつまでも追いかけ続けるに足る「好奇心」を持たせた最大の功労者であったことが本書を読むと分かります。
上記の記事の中で私は、
「彼は『文法方式の学校英語』を否定して耳から入る英会話を重視するというスタイルを貫いたという点で英語教育に関するランゲッジ・ヴィレッジの考えとは異なります。」
と書きました。
確かに、そのとおり私は(大人に対する)外国語教育においては「文法教育」が欠かせないということについて絶対的な信念を持っていますが、ただこのことをもって平川氏の実績を否定するつもりはありません。
なぜなら、学校教育における現在の状況と当時の状況は全く異なるという事実をふまえる必要があるからです。
私は、現代の学校教育が当時と比べて圧倒的に充実し、誰もが英文法を丁寧に学ぶ仕組みが出来上がった一方で、それを使って会話する環境がいまだに圧倒的に不足しているという状況においての「文法軽視・コミュニケーション重視」の流れに異議を申し立てているだけです。
日本人は文法をやったから英語ができないのではなく、文法しかやらずに会話の機会を得られなかったから英語ができないという事実から目をそらしてはいけないのです。
平川氏の「英語会話」の時代には世間一般の英語知識はほぼゼロと言ってよかったと思います。
本書を読むことで、そのような状況の中で日本人に対して広い世界を意識させ、英語を身近に感じてもらうためにはどうしたらよいか、その答えとして彼がやったことはその時点においては間違いなく最適解であったという確信を得ました。