日本の英語 #38
2014年5月10日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 日本の英語
【著者】 福原麟太郎
【出版社】 恒文社
【価格】 ¥1700+税
【購入】 こちら
昭和33年に出版された本です。著者の福原麟太郎氏はこのコーナーで紹介する多くの英語教育を真剣に考える学者さんに強く影響を与えたと思われる人です。
また、その鋭さは私の著書「富士山メソッド」のコラムでも紹介したこの本の中に書かれている以下の文言でも明らかです。
「実用的に英語を十分活用したい人は中学校や高等学校で習った英語の基礎の上に立って別に学習してほしい。中学校がすんでからでもいい、高等学校がすんでからでもいい、大学のあとでもよい。徹底的にするならアメリカの軍部でこしらえたという強行日本語学校のように、志望学生を缶詰にする英語学校を作り、四六時中英語を話し書き読ませ、教師には英米人を多くして何もかも英語的な空気の中に生活させて厳格周到、一刻の無駄もなく英語学習に専心集中させれば六か月ないし一年の訓練で英米社会の普通の人を相手に話し書き読み聞く能力を養うことは難しくないと私は信じている。日本のほかのところでは知らず、少なくとも文部省の管下では、一度もそのような教育法を実施したことはない。」
そうです、この方は昭和33年の時点に明確にわがランゲッジヴィレッジのスタイルそのものの概念を明らかにされていたということです。また、同時に、学校教育でやるべきこと、その上でやるべきことをしっかりと区別されています。
つまり、知識の蓄積を実用につなげるためにはどのようなことをしたらよいのかということがその時点で明確に分かっていたということになります。
現在の学校教育の方向性を見ているととてもそのことが分かってやっているとは思えません。実に56年という時間を無駄にしてしまっている、いやむしろ状況は悪化してしまっているといってもよいと思います。
もちろん、福原氏はこの文章の中で、その仕組みを理解した上で「学校教育で実用英語をやる必要はない」と言っています。
それは氏が昭和33年時点の日本社会の状況をもとに判断していることであって、この56年の時間の流れの中でどれだけグローバル化したかということを考えれば、その結論は当然変わってくるはずです。その変化のすさまじさは以下の統計を見ても明らかです。
昭和33年ごろの日本人の出国者数を調べてみました。いろいろな統計があるのですが、だいたい11~12万人くらいのようです。そして、現在、平成25年の統計では1747万人です。
実に146倍です。
昭和33年時点で処方は異なりますが、診断はしっかりできていたわけです。今はその診断に基づいて今の体の状態にあった処方をしなければならないのです。
文責:代表 秋山昌広