
理系的 英語習得術 #339
2025年1月28日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 理系的 英語習得術
【著者】 鎌田 浩毅
【出版社】 筑摩書房
【価格】 ¥968+税
【購入】 こちら
いままで様々な英語関連の新書をご紹介してきましたが、今回はその中でも特に「特徴的」なものです。
というのも、「英語習得」とは対極的に見える「理系」というキーワードを掛け合わせているからです。
ただ、自然科学(理系)の世界においては、「研究成果は必ず英語で学会発表し、かつ最終的に英文の論文に残さなければならない。英語を過不足なく日常的に使うことは科学者にとっては必須の条件である」という著者の冒頭の言葉によって、それは対極どころか必須のものであることを当然のことながら確認させていただきました。
ただ、ここで一般的に「英語習得」とより親和性があると思われている「文系」の捉え方と大きな違いとして、「英語習得」が目的よりも「手段(ツール)」の性格が強くなりがちだからこそ、「英語で具体的に目に見える成果を出すため、最も効果的な学習は何か」という視点が重要になってくるのだろうということです。
本書の著者の鎌田浩毅氏は「京大人気No.1の火山学者」として有名な方で、英語研究者としてではなく英語活用者としての立場からの「限定的」英語学習の進め方をまとめてくれています。
「限定的」とは、私たち文系人が捉えがちな「四技能を総合的に伸ばしていく」という大きな目標ではなく、自分が今何を英語でしたいのかという個別具体的な「目標」と、それを実現するための「戦略(計画)」、そして最終的に何をどう勉強するかという「戦術」をたてるという意味です。
その意味では「理系的」なものです。
ただ、実際に本書を読んでみると、その戦術として使用する学習内容は実にオーソドックスなもので、私が今までにこのブログで紹介してきた英語学習の本質を外さない内容ばかりで、奇抜なものは一つもありませんでした。
つまり、著者が本書で伝えていることは「いい「戦略(システム)」にいい「戦術(材料)」を載せなさい」ということに尽きます。
一瞬、「理系的」という飛び道具的な何かを期待してしまいましたが、本書を読了することで改めて分かることは、当然にして「理系」であろうが「文系」であろうが、しっかりとした人が経験と論理に基づいて作り出す「英語習得法」はいわゆる一つの「王道」に集約されるという事実です。