
私の外国語修得法 #95
2015年1月14日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 私の外国語修得法
【著者】 阿部謹也 編
【出版社】 中公文庫
【価格】 ¥648 + 税
【購入】 こちら
本書は、17人の大学関係者を中心とするアカデミックな方々による「外国語習得」に関する体験談を集めたものです。ただし、これだけの面々による編書ではあるのですが、この本はいわゆる「成功談」を集めたものではなく、「失敗談」を多く含んだ泥臭い内容になっている点に特徴があります。
実は、本書の編者である阿部謹也先生は私が大学に入学した時、著者の一人である石弘光先生は私が卒業した時というタイミングで一橋大学の学長をやられていた方なので、非常にご縁を感じて手に取ったのですが、そのような大先生方も実は外国語学習にこれほどまでの苦労をされていたということが良く分かる微笑ましいエピソードも満載です。
共通して感じられるのは、やはりアカデミックなフィールドで活躍されてきた方々なので、「読む」ことにかけては非常に自信をお持ちであるのに対し、「話す」ことにかけて非常に苦手意識を持たれていて、それに対する克服努力を中心に書かれていることです。
また、興味深かったのは、「読み」に加え、「書き」にも自信をお持ちかと思ったのですが、実はこの「書き」が最も難関であるという石教授の指摘でした。
石教授は以下のように書かれています。
「「英語の読み書きは問題ないのですが、話せなくて」という人に時折お目にかかるが、私はこの人をビギナーだと判断する。そもそも、日本語でも「書く」ことは困難である。だからこそ、文筆家がおり、文章力を競うわけであろう。自由に「読み」「話す」外国人でも、一部の人たちを除くと日本語の文章を書ける人はほとんどいない。それだけ「書く」ことは、語学力の究極の到達点だと私は考えている。(中略)どの言語でも書き言葉は、書き手の品位を表すものである。読み手としていい英語と分かっても、各側に回ると語彙不足、文章構成力不足でまことに幼稚な英文になるのがオチである。」
「話す」と「書く」という発信に関わる力の必要性は高まるばかりですので、これらの先生方のこの二つの分野の克服体験談は非常に参考になると思います。
文責:代表 秋山昌広