おすすめ書籍紹介

脱・日本語なまり #362

2026年5月17日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介

【書籍名】  脱・日本語なまり

【著者】   神山 孝夫

【出版社】  大阪大学出版会

【価格】   ¥2,200 +税

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私は、(中学生以降に英語学習を開始した日本人の)英語の発音に関しては、日本人が本質的に対応可能なものはきちんとやり、対応不可能もしくは不可能ではなくとも困難性が高いものに関しては、他の日本語にある近い音で乗り切る(ごまかす)代わりに、文法の力を駆使して文脈を作り出す力の向上に時間と労力を使うことに徹するよう勧めています。

ですので、本書のタイトルにある「日本人なまり」から脱することにそこまで気を遣うことはないというのが基本スタンスです(本音を言えばむしろ、日本人が必要以上に「日本語なまり」を気にすることこそが日本人から英語を遠ざける元凶だとすら考えています。)。

ただ、言語学者である慶応大学の川原繁人教授の「音声学」に関する本を何冊か読んだときに、彼が本書を自分自身の研究姿勢に多大な影響を与えてくれたとの最大限の賛辞とともに紹介されていたので、川原教授にそこまで言わしめるとはどれほどのものだろうと興味を持ち読んでみた次第です。

大阪大学にて印欧比較言語学の初歩を教えている著者は本書の著作意図を次のように述べられています。

「学生諸君が日ごろ使っている日本語と、最低でも六年間学んだ英語の音声学的特徴を極めて平易に解説して、改めて英語の音をしっかりと習得していただき、また彼らの英語の中に知らず知らずのうちに紛れ込んだ(あるいは誤って教え込まれた)日本語なまりを指摘し、これを一掃するお手伝いをする。これに続いて、新たに大学から学ぶことになる他の主な外国語に生じる新たな音について解説することになるが、日本語と英語の音が正確に把握・習得された後であれば、次の言葉で新たに学ばねばならない音の数は激減する。したがってそれら新たな音の習得の効率は飛躍的に向上すると期待される。これが小生の描いた構図である。」

この著者の意図を目にしたとき、私はかつて書いた「アルファベット日本語化論」の記事の中において次のように書いたことを思い出しました。

「小学校のうちから正式な日本語として、主要外国語の発音をそのまま取り入れる教育を受けることになるため、現在多くの日本人に見られる外国語発音をすることに対する『恥ずかしさ』とそれを発音する人に対する『蔑視』の感情をなくすことができます。これにより、外国語教育をあえて低年齢化する必要もなく、各言語を始めたいときに始めたとしても、発音において苦労することなく自然体で学習できる素養を身に着けることになる。」

そして、改めてこの内容を確認してみると、著者の意図と私の論はかなり基本的な考え方を共有していることを発見したのです。

にもかかわらずなぜこうも「日本語なまり」に対する見方が真っ向から対立しているのか、それ理由は本書を読み進めることですぐに判明することになりました。

それは、私がよく言う「『日本語なまり』を気にしてはならない」というときの「日本語なまり」と本書のタイトルである「脱・日本語なまり」の「日本語なまり」とはその言葉が指している意味に違いがあったからなのです。

それは、著者のいう「日本語なまり」とは、私が用いているようないわゆる「日本人っぽい英語だと判断される英語」ではなく、日本人がいくら注意してもその存在に気づくことができないレベルでの「深刻な日本語なまり」のことだったのです。

これは結構衝撃的というか、本書によって指摘されなければどうしても補足することができないと思われる実に「深刻な」ものであり、慶応大学の川原繁人教授をして「自身の研究姿勢に多大な影響を与えてくれた」と言わしめるのも納得といったところでした。

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