
英文法教室 #340
2025年2月5日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 英文法教室
【著者】 伊藤 和夫
【出版社】 研究社
【価格】 ¥1,500 +税
【購入】 こちら
#339「理系的英語習得術」の中で京都大学の鎌田浩毅教授が次のように本書の執筆者である伊藤和夫先生を絶賛されていました。
「伊藤先生の講義を聴いた最初の日の衝撃は今も忘れられない。英語の構文を見事に分解して、なぜそう解釈できるのかを実に論理的に解説してくれていたのだ。先生は英文を読むときに徹底的に『理詰め』で考える手法を提示したのである。そこには文法という知的な体系が持つ面白さが存在したのである。この英文を理詰めで読むことの意義を解説した決定版が伊藤和夫著『英文法教室』なのである。」
理系分野における知の巨人ともいうべき鎌田教授をして、ここまでの大賛辞を贈らしめる本書の内容はいかばかりのものかと好奇心が高まり、すぐさまアマゾンでポチった次第です。
実際に読んでみると、正直言って鎌田教授があそこまで絶賛するほどに新しい知識や新しい見方が書かれているわけではありませんでした。
それは、おそらく私がこの書籍紹介ブログで様々な英語関連書籍を取り上げてきたことで、本書の中で指摘される項目の多くがすでに既知のものとして認識できていたことがその原因ではあると思われます。
つまり日本の英語教育は、本書が発刊された1979年から時間の経過とともに確実に進歩してきたということなのだと思います。
ただ一つ特筆すべきは、普通の英文法指導者であれば「暗記項目」として流してしまうような小さな引っ掛かりに対しても、著者は言語を駆使して痒いにところに手を届けさせようとする強い意志が感じられるということです。
例えば、こんな感じです。
「本書の執筆にあたって筆者が志したのは次の点である。文法はある点では分類を手段とする学問である。しかし、分類にはものの性質を明らかにするとともに、反面これを隠す性質もある。二つの分類概念の中間にある事項、両者の性質を兼ね備えている事項を無理に片方に押し込めば、ゆがんだ結論しか得られなくなる。学校文法はもともと『便法』に過ぎず、その分類には限界があるにもかかわらず、それを絶対視するために多くの不毛の議論が生まれている。これを脱却するためには、分類の根本に戻って別の分類概念を使ってみること、比喩的に言えば眼鏡をかけ替えてみることが必要なのである。」
実はこの発想は私が自ら主宰する「文法講座」の背骨にしているものです。
例えば、It tastes good.やIt sounds nice.のtasteやsoundといった動詞は「不完全自動詞」と分類されるのが一般的だと思われますが、私はこれを「be」「become」などと一括りにして「イコール動詞」という分類にしています。(伊藤先生自体は本書においてはこの「不完全自動詞」という一般的な分類を採用されています。)
こうすることで、SV(自動詞) SVO(他動詞) SVC(イコール動詞)という3文型の威力を最大限に高めることができるからです。
また、「助動詞」にしても、法助動詞として分類されるcan may mustなど以外にも、第一助動詞に分類される疑問・否定をつくるdoや完了形を作るhaveや進行形や受身を作るbe動詞をも含めるという分類が一般的に教えられるものだと思いますが、私はそれらの後に来るのが全て「動詞の原形」であるという形を優先したいがために、第一助動詞のdoと法助動詞のみを「助動詞」として分類し、be動詞は上記の通り「イコール動詞」として、haveは「完了形を作るhave」という独立項目として覚えていただいています。
私としては、英文法全体に最初から最後まで一本の背骨を通すことを何よりも大事にしたいことからこのような独自の分類をすることへの躊躇はゼロではありませんでしたが、本書におけるこの伊藤先生の「眼鏡をかけ替えてみること」という言葉によって、改めて大きな自信を持つことができました。