英語リーディングの真実 #331
2024年11月17日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 英語リーディングの真実
【著者】 薬袋 善郎
【出版社】 研究社
【価格】 ¥1,300+税
【購入】 こちら
#330「英語リーディングの秘密」の続編です。
「前著によって、『英文が読める』すなわち、すべての動詞について述語動詞か準動詞かを見分け、その文の中での準動詞の役割を適切に把握できるようになった人のほとんどは、『英文の仕組みも単語の意味も分かっているのに、何かすっきりしない。100%読めたという確信が持てない』ことに悩むようになる、こういう人は英語リーディングの第二段階に入ったのです。」
これは本書の「はじめに」に書かれていることです。
正直に言って私自身も、まさにこのような悩みを抱えている一人です。
本書は、英文を読んでいるときにぶつかる、こういう釈然としないところを見逃さず、すっきりしないのは何が原因かを特定し、それについてどう対応すべきかを明示してくれる実に頼もしい本なのです。
英文の仕組みと単語の意味が分かったうえでまだスッキリしない原因としては、次の三つが考えられ、それぞれの解決方法を以下のように具体的に提示しています。
① 語の「意味」が分からない
婉曲表現・比喩・もじり・指示語の中身・文の名詞化(名詞構文)・判断の枠組みとしての5W1Hの存在を知ったうえでそれらをトレーニングする。
② 語の「内容」が分からない
Coherence(論理一貫性)が疑われるときにどこに気を付けたらそれを見つけることができるか、そのポイントを知る。
③ 語の「使用意図」が分からない
Cohesion(密着性)の低さ、つまり論理の飛躍をあえて作って、読者に考えさせようとする書き手の意図の存在を知り、その飛躍の間に自分なりの中間命題を入れて解決する。
例えば、①の「もじり」についてですが、「欲しがりません勝つまでは」という文に関して、その第二次大戦中のスローガンとしての存在を知っていなければ、それぞれの語の意味が分かったとしてもその文を自分の中で咀嚼することはできるわけもありません。
また、②の論理の一貫性でいえば、「Always give a job to a busy man.」という英文はそのまま日本語に訳すと「忙しい人には常に仕事を与えなさい。」となります。でも、これだと論理が一貫しません。忙しい人には休みを与えたいという常識的な心の動きがあるからです。しかし、この常識は日本語という言語の「動詞が最後に来る」という傾向が強いからこそなのです。一方で、英語には「文末焦点の原則」があり、ここで言いたいのは、「(仕事を振るのは)常にbusy manに限る」ということです。つまり、一貫性をつかむには日本語と英語の性質に違いを理解しておく必要があるということです。
最後に、③の論理の飛躍に関してですが、これについては例示された日本語の事例が非常に面白かったです。
「また寝坊、ついに親族死に絶える」
この川柳が傑作として成立するためには、「寝坊(大前提)」と「親族死に絶える(結論)」の間に「中間命題」を読者が見いだせるかどうかにかかっているというわけです。
つまり、会社に寝坊しましたという言い訳では許してもらえないので、「おじさんが亡くなりまして、、、」という言い訳を考えるのですが、それが何度も続くと、、、というところに面白みがあり、この「論理の飛躍」こそがミソということになります。
この川柳の事例は少し極端な例ですが、英文を読んでいて「なぜそうつながる?」と悩んでしまうことは多いことは実感としてあります。それを、「これって筆者のミスなのでは?」と他責に逃げるのではなく、しっかりとした「中間命題」を導き出す努力を重ねる自責の姿勢の重要性を理解することができました。
とまあ、本書は私たちにとっては外国語である英語においても「100%読めたという確信を得るため」の第二段階(超ハイレベル)の指南書ですから、なかなかその領域に達するには、これを読むだけでは難しいことは事実でしょう。
でも、何でこうもスッキリしなかったのかというその原因究明については、「ああ、こういうことだったのか」とスッキリすることはできるはずです。(笑)