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誰がこの国の英語をダメにしたのか #103

2015年3月15日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介

ダメにしたのか

 

 

 

 

 

 

 

 

【書籍名】  誰がこの国の英語をダメにしたのか

【著者】   澤井 繁男

【出版社】  生活人新書

【価格】  ¥680 + 税

【購入】    こちら

かつて駿台予備校の人気英語講師であり、現在関西大学の教授である著者による昨今の学生の学力低下についての分析本です。基本的には、その原因は「学生」「教師」ともに知的好奇心を失ったことにあるとしています。

この学力低下は、大学入試センター試験、そしてその前身である共通一次が導入されてから起こっていると言います。かつては、各大学が「うちの大学はこのような学生がほしい」という明確なメッセージ性を持った知的刺激に満ちた出題をしていたことから、学生の側も、この大学でこの学問をやりたいという直接的な学問の「動機」があったのに対し、これらのテストの導入後は、そのような刺激がなくなり、何を学びたいかではなく、どの科目をとったら点数上「有利」かというような実利的「動機」が先行してしまうようになったからだというのが著者の分析です。

この本は、2001年出版ですので、当時はセンター試験を見直すなどという雰囲気は全くなく、センター試験を採用する私大が毎年増えていくようなセンター試験全盛の中で書かれたものです。ですから、書いている著者本人も、批判はすれどその試験が廃止になるなど考えもしない中で発言されていたと思います。

しかし、昨年末、遂に大学入試センター試験は廃止され2020年「大学入学希望者学力評価テスト」に移行するという決定がなされました。しかも、それに関連し、英語の試験に関してはTOEICやTOEFLなど世界的な外部試験を活用する方向性が出されたのです。

ただし、この動きは著者が指摘した問題を解決する方向に向かうものではないことは明らかだと思います。特に、英語の試験をTOEICやTOEFLなどを活用して行うことなど、日本国全体としてきちっとした英語教育を施す気概と責任を完全に放棄することを宣言することに近いものだと思うからです。

このあたりにも関連することですが、以前この書籍紹介でも挙げました平泉氏(会話重視)と渡部氏(読解重視)の「英語大論争」に関しての著者の次の指摘はもっともだと思いました。

「会話と読解の二項対立には時代を超えた普遍性があると思う。真の国際人は、会話と読解を兼備してしかるべきである。幅広い知的好奇心と教養、読解力、聴解力を含む会話力、この三つがなければ国際人などとは言えないわけであって、どの一つが欠けてもむなしい。どれが一番大切かなどと言い争うのは最もむなしい話である。(一部加筆修正)」

このような趣旨の発言が「受験産業」の中心である予備校の講師から、高校教師や大学関係者を含む日本全体に対してなされたことに対して、非常に逆説的な気分にさせられます。そして、彼らはもっと奮起するべきだと思います。にもかかわらず、この動きがより加速しているのを見るたびに、何とも言えないやるせなさを感じざるを得ません。

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