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バイカルチャーと日本人 #47

2014年5月16日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介

バイカルチャー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【書籍名】 バイカルチャーと日本人

【著者】  櫛田 健児

【出版社】 中央公論新社

【価格】  ¥740 + 税

【購入】    こちら

前回#46にて紹介した「子どもに英語を教えるな」の中で取り上げた「バイリンガル」という概念について深堀して考えることを目的とした本です。

著者は、日本人の父親とアメリカ人の母親を持ついわゆるハーフで日本のインターナショナルスクールを卒業しアメリカの大学に進んだという経験をお持ちです。

彼はその自分のバックグラウンドの中で、「バイリンガル」という概念を単純に「日本語と英語の両方を話すことができる」という言語的側面からの概念に限定することには少々問題があると考えるようになります。

そして、その問題を解決するためには「バイリンガル」という概念を(狭義の)「バイリンガル」と「バイカルチャー」という二つの概念に分解して考える必要があるといいます。

具体的には、日本語力+英語力という単純な言語能力を(狭義の)「バイリンガル」、日本文化適応能力+異(欧米)文化適応能力という文化への適応能力に分解して考えることを提案しています。このように考えると、縦軸と横軸でバイリンガルの概念を言語の面と適応力の面から複合的に「度合い」で判断することができるようになります。

例えば、言語的にはそこそこ問題がないけど、文化的、常識的には欧米文化に疎いケースや、日本語しかできないけど、ノリが非常に欧米的で言葉に関係なくスムーズな交流ができるケースなどです。

本書には、彼の交友関係の中から、さまざまな具体的ケースが提示されています。

このような視座から、結論的には日本の英語教育の問題解決には、単純に言語的側面から問題を見ようとしても効果的な解決にはつながらないという主張が印象的でした。

政策的にオーラルコミュニケーションに傾斜した現在の日本の英語教育においてALTを増員しても、彼らの役割があくまでも日本人英語教師の「補助」にすぎず、極端なところでは「人間テープレコーダー」でしかないということでは、「バイリンガル」、「バイカルチャー」双方の面から大変もったいないことが行われているのだということを再認識させられました。

また、本書が日本でこの「バイカルチャー」を身に着けることは非常に困難なことなのだということを強く印象付けることに終始せざるを得ないということを非常に残念に思いました。

まあ、それは仕方がないことだとは思いますが、少なくともランゲッジ・ヴィレッジはその点にも確実にアプローチできるプレーヤーでありたいと思っています。

 

文責:代表 秋山昌広

 

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