日本語が英語と出会うとき #222
2019年8月14日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 日本語が英語と出会うとき
【著者】 今野 真二
【出版社】 研究社
【価格】 ¥2,200 + 税
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非常に面白いタイトルになっていますが、興味のない方にとっては、その内容は非常に専門的で非常に退屈な内容かもしれません。
なぜなら、そのタイトルの通り、初めて日本語が英語と出会ったときから、いかにその二つの言語を結びつけるかに当時の辞書編纂者が苦労したか、その足跡を細かく紹介するというのが本書の趣旨だからです。
しかしながら、それを我慢強く読み続けていくと、今現在にも続いている日本人と英語の「距離」の根源を深く理解できるような気がしてくるのです。
例えば、なぜ日本人はネイティブの発音とは似ても似つかない発音で単語を覚えてしまうのか。
当時書かれた英和辞書において、「to turn the back」を「ツー タルン ゼ ベツク」と表記されていたという事実を突き付けられると、それも仕方ないと思わざるを得ません。
例えば、ヨーロッパにおいてそれぞれの言語が出会うという時には、おそらく多くのネイティブ同士が実際にやり取りをする中で、辞書の編纂も行われていくのが通常でしょう。(しかも、そもそも同じ語族なので、元は一つでつながっていると考えられます。)
そうなれば、発音についても、同じアルファベットを使っていることもあり、オリジナルに非常に近い形でその音をとらえることができます。
それに対して、日本語が英語と出会った当初、「オランダ語」という第三者的言語を解しながら、またネイティブ同士でのやり取りの機会は非常に限られた中で、その編纂が行われなければならなかったわけです。
だとすれば、上記のような表記しかせざるを得なかった当時の編纂者を現代の私たちが責めることはフェアではないでしょう。
そして、意味についても、長い間鎖国を行ってきた日本の言葉とそれらとの間には非常に大きな「距離」があり、それを埋める作業である辞書の編纂には想像を絶する苦労があったことを追体験することができます。
とはいっても、すでに日本人が英語と出会ってから150年以上が経っているわけで、現在もこのことを少なからず引きずっているという事実は、異常なことであり、現代を生きる私たちの責任だと考えるべきだと思います。
グローバル社会を迎えた私たちは、まずはこの「日本語と英語との出会い」の特殊性を理解した上で、その距離を縮める努力をしていかなければならないということを改めて確認しました。
文責:代表 秋山昌広