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英語教育、迫り来る破綻 #26

2014年5月10日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介

迫り来る破綻

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【書籍名】 英語教育、迫り来る破綻

【著者】  大津由紀雄 江利川春雄 齋藤兆史 鳥飼玖美子

【出版社】 ひつじ書房

【価格】  ¥1000(税込み)

【購入】   こちら

 

本書は、大津由紀雄氏、江利川春雄氏、齋藤兆史氏、そして鳥飼玖美子氏の面々が集まって今回の文部省の決定に合わせて緊急に発行されたものです。

このメンバーは、私が「信頼性の高い英語教育の専門家の先生方」と思う人々の中でもいわゆるオールスターといってよい方々です。

この本を一通り読めば、誰か一人だけの意見という形ではなく、専門家の総意が明らかになる内容になっていると思います。

確かにこの先生方のおっしゃっている内容は理屈として完璧だと思います。ですから、これらのことを無視して現実に進んでしまっている文科省の方針は絶対にあってはならないと思っています。

しかし、この先生たちの考えを知れば知るほどどこか精神的に暗くなってしまう部分がいままでありました。つまり、論理に夢がないとでも言いましょうか。経済界、子どもの親たち、すなわちこの件に関する利害関係者に「希望」を与える内容になりにくいということでした。

しかし、今回本書の最後が以下のような言葉で締めくくられていたことで、私の気持ちがすこし明るいものになりました。正直、こんなおどろおどろしいタイトルの本の中で、この問題についての前向きな答えを見つけられるとは期待してはいませんでしたが。

「(学習者自らが英語の必要に気が付いて努力をしようと思ったとき、)努力を支援するために自主的に学習できる施設をたくさん作る。それプラス、努力を支援する指導者の要請に資金を投入する。指導力を向上させるための余裕を作る・・・・でも、それが真っ当なんじゃないか。一般受けはしないかもしれないけど、正論ってそういう地味なもんです。」

その通りだと思います。

学校の体育の授業で、すべての生徒を甲子園に行かせることはできない。でも、草野球くらいはみんなができるようにしてあげること。それから、草野球では飽き足らず、いざ甲子園に行きたいと思った生徒の努力を支援してあげられるような環境を作ることこそが、限られた予算で最も効果を高めることになるのだということです。

このことの重要性は私どもランゲッジ・ヴィレッジとしては痛い程分かっています。

LVでは、「10年やってもできなかった英会話がたった2週間でできるようになる奇跡」というフレーズを使っています。

このことは「6年、10年かけて築き上げた「知識」としての「文法」「語彙」が頭にあることを前提に、2週間その「知識」を使い倒す」環境というカラクリによって実現されます。

ですから、「使い物にならない」文法や語彙などを覚えるという「無駄」な努力をさせられたと思っている方々の努力はこのような環境を得られれば、便利な道具という使い物になり、「無駄」ではなくなるのです。

逆に言えば、この「知識」がない方にLVの合宿をいくらやっても「できるようにはならない」ということが明らかになっています。

最近、少しずつその傾向が出てきてしまっているように感じるのですが、いわゆるオーラルコミュニケーション重視に学校教育に変わってきたこともあり、高校生や中学生に対して合宿を提供しても今までのような効果が従来の日本人に比べて出にくくなっているようです。

いわゆる、「日本人は文法や語彙はあるけど、、、」という常識が通じなくなってきてしまっています。だからと言って、コミュニケーションがかつてと比べて上手になっているかというとそれもあまり実感しない。

やはり、これらの先生のおっしゃっていることがある程度実証されているように感じます。

私たちLVは学校教育の枠外で、上記のことを実践しています。そのことは、言い方は悪いですが、従来からの「学校教育」に寄生(活用)する形で実現しているということだと思っています。

そして、その結果は、少なくとも、そのことはこれらの先生の理論が間違っていないことを証明するものだと私は考えています。

ですから、今回のこの改革の行く先が「破綻」だとする先生方の見方は残念ながら正しいのではないかということが私の実感です。

だからこそ、LVとしても、これらの先生に負けないくらいしぶとく「正論」を振りかざすとともに、その「正論」を「実践」をすり合わせる努力をしていこうと思っています。

 

文責:代表 秋山昌広

 

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