日本人と英語

ネイティブスピーカーとはなにか

2018年11月30日 CATEGORY - 日本人と英語

以前に書籍紹介ブログにてご紹介した「英語教育幻想」からいくつかテーマをいただいて書いていこうと思います。

第一回目の今回は、「ネイティブスピーカー」の定義についてです。

日本においては、いわゆる英会話学校において「ネイティブスピーカー」が圧倒的な存在感を示していると言える現状があります。

実際、ランゲッジ・ヴィレッジへのお問合せも、「ネイティブ講師は何人ですか?」というものがかなりの数に上ります。

ですが、それらの質問をされている方も、では「ネイティブスピーカー」とは実際どう定義されているのかを理解されているかと言うとかなり怪しいものだと思わざるを得ません。

本書で著者は、「ネイティブスピーカー」に対して以下のような考え方を提示されています。

「英語など世界的に拡散している言語の場合は、ネイティブスピーカーの多様性を認めざるを得ません。実際に、一般に受け入れられているようなネイティブとノンネイティブを二分化してとらえる見方が疑問視され始めました。現在の言語のネイティブ性は理論言語学と社会言語学の二つの立場から説明されています。まず、前者は、ネイティブ性を文法分析における文の正確によって判断するという立場です。つまり、文法的に正しい英語を話すことがネイティブ性だとします。しかし、日常の言語使用において、必ずしも規範的で完全な文法に準拠しているとは限りません。このように、実際の生活空間で見られる多様な言語使用の実態から説明するのが社会言語学研究です。この考え方は、単に抽象的な言語能力を指しているのではなく、話者のアイデンティティに深くかかわる三つの要因によって判断されるとします。それは、言語力・自己所属感・他者の承認です。つまり、ネイティブスピーカーであるかどうかは客観的な基準に基づいて判断されるというより、自他の意識が大きく働くということです。(一部加筆修正)」

この後者の考え方については、ランゲッジ・ヴィレッジで仕事をしていると本当に良く分かります。

というのも、現在のランゲッジ・ヴィレッジに所属している講師は5名で、出身はUKが一名、USAが三名、そしてフィリピンが1名です。そして、私を含む多くの日本人は、「ネイティブが4名でノンネイティブが1名。」という判断をします。

しかし、彼ら、特にフィリピン人講師は、その認識に納得がいかないという本音を漏らします。

彼女は、英語を話すうえで問題のない語学力を持っており(語学力)、その語学力に基づいて社会生活をほとんどすべて英語で行っており(自己所属感)、また日本人以外にはその二つのことを当たり前に受け止められている(他者承認)と自分自身が感じているからです。

ですから、彼女は日本以外では明らかに「ネイティブスピーカー」ですが、日本では「ノンネイティブスピーカー」となってしまうのです。

このことは私自身気を付けなければならないなと思いました。

それは、引用の冒頭、「英語など世界的に拡散している言語の場合は、ネイティブスピーカーの多様性を認めざるを得ません。」という指摘から強く感じさせられたものです。

私たち日本人は、今必死に学ぼうとしている英語というものの言語的本質の理解からできていないという事実を突きつけられたように感じました。

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