日本人と英語

バイリンガルの脳のメカニズム

2015年9月30日 CATEGORY - 日本人と英語

脳

 

 

 

 

 

 

 

 

前回 に引き続き、「日本人に相応しい英語教育」について、書こうと思います。

今回のキーワードは「バイリンガル脳」についてです。

バイリンガルという言葉は、2つの言葉を操る人やその能力という意味で当たり前のように使われる言葉ですが、よく考えてみるとその能力の程度については全く無視して使用されています。

本書においては、この「バイリンガル脳」についての説明があり、その程度ごとに深い考察を伴っており、非常に分かりやすい説明がされていましたのでご紹介します。

まず、外国語をどの時期に習得したかで脳のどこの部分が使用されるかが以下のように変わってくるようです。

日本語と英語のように言語差が大きい外国語の場合、「幼い程、外国語と母語とでかなり近い脳の領域に形成される」のに対して、「遅くなると、外国語の中枢が母語とは若干ずれた脳の領域に形成される」ことが脳研究において明らかにされているようです。

次に、外国語活動時の脳の活動状態ですが、日本人に英語を聴かせた場合、①英語が苦手な人では、脳の言語中枢の活動がほとんど見られないが、②英語にある程度習熟してくると、活発な活動が認められ、③熟達したレベルだと、再び活動が低くなる、ということが観察されているようです。

これは、①初心者がほとんど英語を聴きとれず、「構造分析も意味解析もしていない」、すなわち初めから言語として捉えようとしていないからであり、②ある程度習熟した人は、「言語処理を脳の機能を総動員して」行っており、③熟達した人や母語話者は「言語処理が自動化しているので、脳の機能の動員をそれほど必要としない」ということだと考えられます。

以上のような現象は、日本語と英語のように言語差が大きい外国語の場合に見られるものであり、言語的に極めて近い外国語の場合は、はじめから③のレベルに近い状態で脳を機能させることができるということでもあります。

前回 のテーマと今回をそのまま理解しようとすると、やはり英語は幼児期にはじめさせた方が良いのかという議論が正論と捉えられそうですが、私はその考え方には賛同できません。

なぜなら、まだこれらの理論は研究段階にすぎず、これらの①②③の区別は、私自身の体感的にも明確なものではないと思うからです。そして、なによりも、母語は思考の基礎であり外国語は所詮コミュニケーションツールであるという大前提は変わらないと思うからです。

そして、逆に、外国語と母語の熟達の差がほとんどなく、両方とも思考の基礎たりうるという状態は、それはそれで人間にとって「幸せ」なことかどうかは一概に言えないと思うからです。

私は、このような考察を一つの研究結果として尊重した上で、あくまでも「日本語にしっかりとした思考の基礎をおき、英語をコミュニケーションツールとして使いこなす」、このことを達成することのほうが、「英語と日本語両方を思考の基礎にできる」ことよりも価値の高いことだという認識を心の底から持てるようにすることが、「日本人に相応しい英語教育」だと思います。

 

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